前回、広告の指標についてお話ししました。
https://engun.co.jp/ad_indicater/

広告指標の意味を理解した上で、まず最初に行うべきは目標(KPI)の設定ですが、これは各広告主様の目的・ご状況によってまちまちなので、今回は割愛します。
今回は、KPIを設定したその先に、行うべきこととして「シミュレーション作成」について書きます。
広告運用では数多くの指標がありますが、目的を達成する上で課題となっている要因を分析して1つずつ改善していくことが必要です。

広告運用者の思考を実例で紹介

広告運用において特に多い「CV数の獲得」を目的とした配信を例に挙げます。
CV数が目標に届いていない場合、CV数を増やすためにまず何をすればよいか?
CV数はクリック数xCV率で計算されますので、クリック数を増やすか、CV率を高めるか2つの選択肢が出てきます。
さらに、クリック数は表示回数xクリック率で計算されますので、クリック数を増やしたい場合は表示回数を増やすかクリック率を高めるかの2つの選択肢が出てきます。
以上を踏まえると、CV数を増やすためには、CV率を高める、表示回数を増やす、クリック率を高めるという3つの選択肢があるわけですが、どの指標を改善していくべきか判断する際の基準値としてシミュレーションが必要になります。

例えば、月間の広告予算 100万円、目標CV数 150件だったとします。
そして、1か月間の広告配信実績が以下のようになったとします。

広告費 95.6万円に対して、CV数が119件で着地しました。
目標に対し、CV数が31件不足したので、改善が必要ですが、どこを改善したら良いでしょうか?
この表だけでは見るべき数字が多すぎて、どこから手を付けて良いか分からないですね。。。

でも、例えば事前に以下のようにシミュレーションを作成しておくと、

配信実績とシミュレーションと乖離しているポイントを見つければ良いことになります。
今回は以下の赤字部分になります。

そうすると改善すべきポイントが2つに絞られます。
1)Google指名検索のクリック率改善
2)Google一般ワード検索のCV率改善

この2つの指標を改善するための施策を行っていけばよいことになります。
尚、施策を決める際の優先順位付けですが、より改善インパクトの大きい点から着手すると良いでしょう。
今回は、「1)Google指名検索のクリック率改善」によるCV数の増加が27件、「2)Google一般ワード検索のCV率改善」によるCV数の増加が5件なので、CV数の増加幅が大きい「1)Google指名検索のクリック率改善」から優先的に行っていくと良いと言えます。
ちなみに、広告のクリック率改善においては、一般的には「広告のABテスト」が主な施策となります。
よりユーザーが興味を示す、クリックしたくなるような広告文にしていくために、訴求や表現の異なる複数の広告を設定し、クリック率が高い広告表現・訴求は何かという検証を行っていきます。

【補足】
今回は分かりやすくするためにシミュレーションと実績の相違点が2つだけになるように調整していますが、実際にはここまで綺麗にシミュレーション通りの数字が埋まることはないでしょう。そのため、どこの数字の差分が大きいのかを見極める力は大事になってきます。

また、配信実績が増えていく中で各広告媒体・メニューの傾向が見えてきますので、その傾向に合わせて適宜シミュレーションを見直し、より現実に即したシミュレーションに直していくことも必要です。
そうすることで、相違点をどんどん絞り込み、改善すべき点を洗い出しやすくなります。

・どういったシミュレーションを作成するか
・シミュレーションと実績の相違のどこに目を付けるか
・そしてその改善点に対してどういった施策を行うのか
この3点が広告運用者としての力の差とも言えます。
広告運用においてはAI・機械学習による広告配信の自動最適化がどんどん進んでいますが、ここの選眼力はまだまだ必要です。

最後に

私は7年ほど広告運用に携わっていますが、正直しばらくの間は「シミュレーションなんて、なんでわざわざ時間をかけて作るのだろう?」と思っていました。
それは、シミュレーションは成果を保証するものではないし、日々実績の数値が変わっていく中でシミュレーション通りになるわけがなく、いちいちシミュレーションの数値を追いかけるなんて大変で、それよりも気になった点を一つ一つ改善していけばよいと浅はかに思っていたからです。
しかし、それではただ漫然と管理画面を眺めるだけ、場当たり的な調整を行うだけになり、正しく改善に向かえている実感が湧きませんでした。
シミュレーションは成果を保証するものではないですが、シミュレーションを作り自分の中に基準値を持っておくことは大事だと、特にここ最近改めて実感しています。

とはいえ、やはりあくまでもシミュレーションはシミュレーションであり、それが直接的に配信実績を変えるものではありません。
そこだけに時間をかけすぎるのも効率的ではないでしょう。
まずは、簡易的に作成し、配信実績に合わせて月に一度くらいの頻度でシミュレーションを更新していくことが良いと思います。
時間をかけすぎずまずは軽い気持ちで作成し、少しずつ更新していくことで効率と精度のバランスを取りながら改善していくことを推奨します。

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Kyotaro Yamaoka

横浜国立大学工学部卒。2児の父。重工業系エンジニアを経て、2015年にWebマーケティング業界に参入。電通アイソバーや博報堂DYデジタル、インティメートマージャーなどとの協業経験を経て、ベンチャー企業のリーダー運用者として多様な業種の広告主を支援。2021年に援軍入社。データ分析に強みを持つ理系ディレクター。