Google広告やYahoo広告やFacebook広告等、インターネット広告では運用型広告が何年もの間ずっと主流です。「運用型」であるからこそ「成果データを踏まえて柔軟に広告配信設定を調整することが可能」であり、それが故に市場の状況に応じて常に良い状態の広告配信を維持するようなことを狙えます。そんな運用型広告ですが、大きな広告予算をお持ちの広告主は広告代理店に広告運用代理を依頼するのが一般的ではあるものの、月間数百万円以下の広告予算をお持ちの広告主の一部では自社運用(インハウス運用)に挑戦する企業も存在はしています。

運用型広告を自社運用することで広告代理店への広告運用代理手数料を支払う必要がなくなる為、金銭的なメリットがありそうだということは想像しやすいと思います。が、その一方で運用型広告の自社運用に伴うデメリットにも注意しておかなければいけません。デメリットを理解して許容するだけの覚悟がないのであれば、いきなり運用型広告を自社運用するのは危険です。では、そのデメリットについて代表的なもの5つだけ(数あるデメリットを全て解説していてはキリがない)を手短に解説していきます。(※デメリットの逆として、運用型広告の自社運用に関する代表的なメリットについてはこちらでまとめています。)

デメリット1.社員がプロレベルまで広告運用スキルを高めるには時間がかかる

自社運用しようということで社員に広告運用業務を担当させても、当たり前ですが簡単には広告代理店社員同様の広告運用スキルのレベルまで到達するには相当な時間がかかります。その為、広告代理店出身者等の広告運用経験者を採用するということも検討しがちですが、一般的な会社の社員の能力がピンキリなのと同様に、広告代理店等の出身者だからと言って広告運用スキルが高いとは限りません。その上、「ディスプレイ広告のみの運用担当だった」等の偏った業務経験しかない広告代理店出身者を採用してしまった際には、結局は他の社員とあまり変わらないということにもなりかねません。どのような組織強化方法を行ったとしても、自社の広告運用チームをプロレベルの広告運用実務集団に仕上げていくには大抵の場合でかなりの時間がかかるはずです。

デメリット2.最新の広告メニューや広告配信手法等に関する情報収集網の構築が大変

ある程度の規模の広告代理店であれば、Google・Yahoo・Facebook等の広告媒体社と繋がりがあり、各広告媒体社から最新の情報を直接受け取っています。更に、広告代理店は他の広告代理店との繋がりも実は意外と少なくなく、「今、効果的な広告配信メニューはあれだよね。」とか「ブランディング目的じゃない限り、あの流行りの広告媒体は使うと危険だよね。」等といった広告業界の人たちの間だけで話されるような情報も入ってくるものです。自社運用するとなれば、こういった最新の情報を持っているような広告代理店たちと勝負することになるわけですから、同じように情報戦で負けない情報収集網の構築が必須となってきます。が、こういった「人との繋がり」で入手するような情報を手に入れるには、自社の役員や広告運用担当者が積極的に広告業界の人たちと交流を図ったり、知人を辿ってそのような人たちと接触したりと、「人との繋がり」を作る地道な努力を継続していくしかありません。

デメリット3.土日祝日や大型連休等の時、社員に広告管理を強制しにくい

インターネット広告は、土日祝日や大型連休等の休日でも止まることなく広告配信されるものです。しかも、インターネット広告の中でも「運用型広告」となれば、そのような休日期間でも広告管理画面にログインして調整作業を行うことで広告配信の最適化をすることができてしまいます。無駄な広告配信を抑制して予算を有効活用するという観点ではこれは良いことであるのですが、休日に社員に強制労働させるのはいかがなものかという考え方も当然ありますよね。広告運用を広告代理店に任せている場合は気にすることがないかもしれませんが、広告運用の自社運用をしている場合は「広告予算は可能な限り無駄なく使いたいが、一方で休日にまで社員に広告運用の管理をさせるのは厳しい・・・」というジレンマに陥ることもあるでしょう。

デメリット4.社員の広告運用スキルがやっと向上しても、意外と社内にノウハウが蓄積されない

半年、1年、3年と広告運用の自社運用をして、やっと社員の広告運用スキルが向上してきたと思っても、その社員が永遠に退職しないとは限りません。事実、広告運用の自社運用をしている企業から「広告運用スキルを向上させた社員が転職してしまった・・・」というお話を伺うことは少なくありません。自社の社員が退職するまでの平均的な期間を知った上で、それまでの間に「広告運用スキルを向上させて、更には社内にそのノウハウを残すような取り組みをしてもらう」よう社員を促しておかないと、会社には何も残らないという事態になりかねません。時間もお金もかけたのに、最後に残ったものは何もないというのはあまりに悲惨ですから、注意しましょう。

デメリット5.もたもたしているうちに競合に奪われた見込客を取り返すには途方もない労力・投資等がかかる

これまでのデメリットで述べてきたように、広告運用の自社運用チームをプロレベルの組織に仕上げていくことは一朝一夕にできるものではありません。そして、その間には「競合は見込客を次々と奪っていって」います。自社がもたもたしていても、競合は待ってはくれません。当たり前ですよね。その後、努力の甲斐あって自社運用チームがプロレベルの組織に仕上がったとしても、奪われた見込客を競合から取り返すのは簡単なことではないでしょう。新規顧客に何かを販売するコストは既存顧客に何かを販売するコストの5倍かかるなんて言われますが、その新規顧客が競合の顧客であれば尚更販売に苦戦することでしょう。

今回は以上です。大きな広告予算をお持ちの広告主ほど、高い広告運用代理手数料を支払ってまで広告代理店へ広告運用を任せるのには理由があります。運用型広告の自社運用には思った以上のデメリットが隠れていたりもしますので、デメリットについての理解を深めて、そのデメリットを許容できるという覚悟ができた場合にのみ自社運用に挑戦してみるのが良いでしょう。なお、弊社では運用型広告の自社運用をサポートする支援も行っておりますので、もちろん自社運用を否定するつもりは一切ありません。あくまでのデメリットがあるという事実を伝えたくて今回の記事を書きました。ご参考にして下さい!

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Akira Kodaka

2005年、SEO・サイト制作で起業。法人向けSEOを請け負いつつ、アフィリエイターとしても活動(当時国内上位1%の報酬獲得実績達成)。また、同時期に美容室を買収し、黒字化させてバイアウト。その後、2010年から8年間、Googleで広告運用スペシャリストとして活躍。新規クライアント専門ビジネス支援部門リード、広告代理店営業マネージャー、通信テクノロジー業界シニアアカウントマネージャーを経験。2018年、株式会社援軍設立。