以前、広告運用とは?というブログを長々と書きましたが、

広告運用とは?

広告運用とはざっくりいうと

マーケティング目標から導き出したKPIを達成するために、日々調整や施策PDCAを回すこと

です。

KPIについて具体的に言うと主に以下のようなことになります。

  • 限られた予算内でコンバージョン数(CV数)を最大化する、コンバージョン獲得単価(CPA)を抑制する
  • 売上やROASを最大化させる
  • 表示回数やクリック数を最大化させる

では、そのために具体的に何をするのか?ということについて書いていきます。

やること

前回の記事(広告運用とは?)と重複しますが、調整する要素は以下の通りです。

  • ターゲティング
  • 広告
  • LP
  • 入札
  • 予算
  • 配信構成

これらについて、日々の調整や施策を行います。
運用に充てられるリソース(予算や工数)は限られるため、その限られたリソースで最大限の効果を出すことが目標です。
主に以下の3点を目指していきます。

  • ターゲティングや広告・LPは効果の良いものを見つける(悪いものを削る)
  • 入札や予算を適正な金額に調整する
  • 配信構成として、ターゲティングと広告・LPの組み合わせを最適化する

効果が良いというのは具体的には以下のようなことです。

  • 表示回数(IMP)が多い
  • クリック率(CTR)が高い
  • コンバージョン率(CVR)が高い
  • 配信単価(CPMやCPC)が安い
  • 1件あたりの購入単価が高い

これは、一般的なKPI指標の計算式が

  • クリック数=IMPxCTR
  • CV数=クリック数xCVR=IMPxCTRxCVR
  • CPA=広告費÷CV数=CPC÷CVR
  • 売上=CV数x購入単価
  • ROAS=売上÷広告費=購入単価xCVR÷CPC

となるため、
CV数や売上を最大化するためには、IMPやCTR、CVR、購入単価は高い(または多い)方が良く、
CPAやROASを抑えるためには、CPMやCPCが安いほど良く、CVRや購入単価が高い方が良いためです。
ただし、IMPが多くてもCVRが低ければ無駄コストになるので、できる限りCVRの高いIMPを増やすことが必要です。

ターゲットの調整

ターゲットについては細かく分けると以下の要素があります。

  • 検索キーワード ※検索広告の場合
  • オーディエンスリスト(ユーザーの行動履歴や興味関心)
  • 配信面 ※ディスプレイ広告の場合
  • デバイス
  • 地域
  • 曜日・時間帯

ターゲットの調整については具体的に以下のことを行います。

  • 効果の良いものを見つけに行く作業(配信ターゲットを追加する)
    • 検索広告なら検索キーワードの追加
    • ディスプレイ広告やSNS広告ならオーディエンスリストの追加
  • 効果の悪いものを削る作業
    • 検索広告:効果の悪いキーワードの停止、クエリの除外
    • ディスプレイ広告:効果の悪いオーディエンスリストや配信面の停止・除外
    • 共通:効果の悪い年齢層、地域、デバイス、曜日時間帯の除外や入札抑制

どちらかというと効果がよいものを見つけに行くために、ターゲット軸を広げていく方が大事だと考えます。
近年、機械学習による最適化が発達しているため設定したターゲットの範囲内で広告媒体が効果の良いものに配信が寄るようにしてくれる(悪いものは配信が抑制される傾向にある)ためです。
追加するキーワードやオーディエンスリストは配信実績からも判断できます。(CVクエリやCVしたユーザーの興味関心などを参考に決定)

※注意

ターゲティングは絞りすぎると獲得機会が減少したり、配信単価(CPM)が高騰してしまう可能性があります。
逆に広げすぎると広告のクリック率やクリック後のアクション率(コンバージョン率)が低下してしまう可能性があります。
なので、適切なバランスを見つけることが大事です。
また、効果が悪いターゲティングも広告やLPを見直すことで改善されることもありますので、一概に削るだけが正しいとも言えません。
配信ボリュームの大きいターゲットにおいては、それだけビジネスチャンスがあるといえますので、そこに対してどういう訴求をすると効果が出るのかを考えることも大事です。

広告の調整

広告については以下の調整要素があります。

  • 広告タイプ
  • テキスト
  • 画像や動画

調整内容としては以下のことを行います。

  • 効果の良いものを見つけに行く作業
    • 広告タイプやアセットタイプの追加
    • 訴求軸の検証
  • 効果の悪いものを削る作業
    • 効果の悪い広告タイプ・アセットの停止

これもターゲット同様に効果がよいものを見つけるための作業が重要です。
特に、広告のABテストによって効果の良いものを見つけに行きます。

※注意

広告タイプやアセットタイプを追加すると基本的にIMPは増えます。その分、CTRやCVRの低下が起きやすいので、無駄クリックの起きやすい配信面に露出されていないかなど注意する必要があります。特にディスプレイ広告の場合、アプリ面で無駄クリックが発生しやすい傾向です。
また、一度に配信する広告が多いとその分1つの広告に充てられる費用・クリックが減り、効果検証が遅くなるので予算とクリック数を考慮して一度に配信する広告数のバランスを考えた方がよいです。

LPの調整

LPは広告クリック後の導線になるため、CVRを高めることが基本目標になります。
具体的には以下のことを行います。

  • 複数のLPがある場合
    • 同時にいくつかのLPを配信し、どのLPのCVRが高いかを見極める
    • 効果の悪いLPを停止する
  • 特定のLPのCVRを高める場合
    • 広告とLPのファーストビューをマッチさせる(ユーザーの離脱を防ぐため)
    • コンテンツの内容や順番、コンバージョンまでの導線を見直す
    • フォームの内容を見直す(入力項目を減らす、入力しやすくする)
    • LPの表示速度を改善する

※注意

フォームの内容はシンプルな方がフォーム送信完了率が高まります。
しかし、ビジネス上顧客を選別する必要がある場合は、必要な項目は残しておくべきで、あえてフォームの項目数を多くして確度の高い人だけを狙いに行くという戦略もありです。(例えば、リソースの限られた小規模のBtoB事業の場合など。)

入札の調整

入札における調整要素は以下の通りです。

  • 入札戦略
  • 課金方法
  • 入札単価

入札戦略や課金方法は広告媒体やメニューによって変わります。
具体例として、Google広告の場合では、

  • CPCを調整したい場合、個別クリック単価
  • コンバージョンを増やしたい場合、コンバージョン数の最大化
  • コンバージョン単価を抑えたい場合、目標コンバージョン単価
  • 売上を増やしたい場合、コンバージョン値の最大化
  • ROASを最大化したい場合、目標費用対効果

の入札戦略を選ぶのがセオリーです。

入札単価は状況に応じて、以下の調整を行います。

  • CPA、CPC、CPMを抑えたい場合、入札単価を抑制
  • IMPやクリックを増やしたい場合、入札単価を強化

また、クリック単価(CPC)で入札単価を決める場合は、以下の計算式で決めることができます。
目標CPC=目標CPAx想定CVR

※注意

入札単価を抑制しすぎると、広告オークションに負け配信が出にくくなります。
検索広告などであればランクによるインプレッションシェア損失率というものが見れますので、この数字が大きい場合はなるべく入札単価を強化する必要があります。
また日予算制限にかかっている場合は、入札単価を抑制することで逆にIMPやクリックが増えることも期待できます。
入札単価を大きく変えると成果が荒れることがあるので、一般的には単価の調整は1日20%以内の範囲で行うことが推奨されています。

予算の調整

予算で考えるべきことは以下の通りです。

  • キャンペーン間の予算配分
  • 予算期間におけるペース配分

キャンペーン間の予算配分は、なるべく効果の良いキャンペーンに予算を寄せることです。
複数広告媒体を配信している場合は、媒体間の予算配分も同様に効果の良いものに寄せていきます。
また、予算期間におけるペース配分もどうように効果の良い時期に予算を寄せるようにします。
例えば、土日が特にCVRの高い場合は土日の予算を多めにするなど。

※注意

広告媒体によっては設定した日予算の2倍の費用を使うことがあります。
特に獲得が期待できる場合、媒体側で自動で効果の良い日に予算を多く使う傾向にあります。(Googleのディスプレイ広告などで特にその傾向がみられます。)
また、入札戦略を変えた場合も学習のために予算が多く出る場合があります。
特に月末などはこの点を考慮して、月の予算を超えないように日予算を強めに抑制するということも必要です。

配信構成の調整

配信構成では、キャンペーンや広告グループの分け方をどうするか考えます。
主に以下の観点で考えます。

  • キャンペーンや広告グループ単位でコンバージョン数を最大化させること
  • 分析したい軸で分けること
  • 広告とターゲットがマッチする組み合わせを考えること

※注意

あまり広告グループやキャンペーンを分けすぎると、1つのキャンペーン(または広告グループ)にたまるコンバージョン数が少なくなるので、最適化に必要な要件が満たせる水準まではできるだけまとめた方がよいです。
要件は例えば、1つのキャンペーンあたり30日で50件のコンバージョン数がたまるようにするなどです。※要件は媒体によって様々です。各媒体のヘルプページを参照すると大体書いてあります。
この要件を満たすために、本当に必要なコンバージョン以外にも中間コンバージョンを設定する場合があります。
中間コンバージョンの例としては、フォームへの到達や、商品詳細ページの閲覧などです。
一方でまとめすぎると広告とターゲットがマッチせず、CTRやCVRが低下するため、必要なテーマごとに分ける必要があります。
例えば、アパレルECの場合、Tシャツとズボンなどアイテムカテゴリでキャンペーンを分ける など。

終わりに

広告の調整要素は多いので、上記の調整内容について

  • 週単位でやることを決めてルーティン化する
  • 成果の良し悪しの基準値を決める

などして、ある程度考える時間を減らしてシステム的に調整していくことをお勧めします。
その上で、配信するターゲット、広告の訴求、LPのコンテンツなどを考える時間を最大化していけると良いと思います。

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Kyotaro Yamaoka

横浜国立大学工学部卒。2児の父。重工業系エンジニアを経て、2015年にWebマーケティング業界に参入。電通アイソバーや博報堂DYデジタル、インティメートマージャーなどとの協業経験を経て、ベンチャー企業のリーダー運用者として多様な業種の広告主を支援。2021年に援軍入社。データ分析に強みを持つ理系ディレクター。