4月になり、初めて広告運用の仕事をするという方もいるかと思います。
ということで、月並みですが「広告運用とは?」というテーマでブログを書いてみたいと思います。

はじめに(概要と結論)

一般に広告運用といえば、インターネット広告の運用を指します。
インターネット広告はマーケティング手法の一つです。
マーケティング手法にはいくつか種類がありますが、大事なのはいずれも何かしらの目的があり、その目的を達成するための手法であるということです。

マーケティングにおいて重要なことは

  • 何を目的とするか?
  • 誰にアプローチするか?
  • 何を伝えるか?

です。特に目的や誰にアプローチするかを決めたうえで、マーケティング手法を決めていきます。
マーケティング手法には広告、SEO、SNS運用などいくつか種類があります。
その中で運用型のインターネット広告を使うと決めたのであれば、以下のことを行っていきます。

▽配信準備内容

1)KPIを決める
2)ターゲット層、訴求内容を決める
3)配信する広告媒体を決める
4)具体的な配信ターゲット、広告文を決める
5)配信構成(広告上のキャンペーン構成)
6)広告予算や媒体間の予算の割り振りを決める
7)広告を入稿・設定する
※1~7の中で順番が前後することもあります。

▽配信開始後の運用施策PDCA

8)成果をウォッチし、課題点を見つける
9)課題や成果を改善するための施策を考える
10)施策の結果を集計・確認し、目標との乖離や要因を考える
11)さらに成果を改善するための施策を考える
以降、9~11の繰り返し

▽日々の運用ルーティン

12)日予算や入札の調整
13)ターゲット・広告・LPの追加や絞り込み
※12~13は8~11の運用施策PDCAに含まれることも多いですが、運用施策としてではなくルーティン化することも多いです。

なお、インターネット広告で検討するべき要素(調整できるレバー)は主に以下の8点です。

▽インターネット広告の構成要素

  • 広告媒体
  • 成果地点や成果ごとの価値
  • キャンペーン構成(広告・LPxターゲットx予算・入札の組み合わせ方)
  • 予算(期間内での予算のペース配分、広告媒体やキャンペーン間の予算配分)
  • 入札(入札金額、入札戦略)
  • ターゲット(検索キーワードや興味関心、行動履歴、年齢性別、地域、デバイス、曜日時間帯など)
  • 広告(テキスト、画像、動画)
  • LP(広告クリック後の訪問ページ)

簡単にまとめると上記のようになりますが、もう少し詳しく解説します。

 

詳しく解説

第1段階:マーケティング目的とKPIの決定

第1段階としては、マーケティング活動の目的を決めることです。
特に一般企業のマーケティングであれば、企業の利益を最大化することが最終目標になることが多いかと思います。なお、ここでいう最大化とは瞬間的なものではなく、長期的な目線で最大化することです。
この最終目標を達成するために、できる限り多くの人に

  • サービスやブランドを知ってもらい、興味を持ってもらう
  • サービスの会員になってもらう
  • サービスや商品を購入してもらう
  • サービスを継続的に利用してもらい、購入回数を増やす
  • SNS・口コミなどでサービスを広めてもらう

ということがマーケティング活動の個々の目的になります。
また、サービスを販売するだけでなく、サービスの元となるリソースを確保するために

  • 求職者にアプローチして、採用につなげる
  • 中間業者の場合は、原材料や商品の仕入れ先を増やす

というのも活動の一環といえるでしょう。
そして、これらの目的の中から現状に合わせた目的を決め、その目的を数字に落とし込んだ目標を決めていきます。

例)
会員を増やすのが目的であれば「1か月で会員数を500人増やす」
売上を増やしたいのであれば、「1週間で売上 100万円達成する」など。
→この時の会員数 500人や売上100万円というのが、一般にKPIと呼ばれるものになります。

まずは目標とKPIを決めることが第1段階です。

第2段階:ターゲットの決定

第2段階は、誰にアプローチするか(ターゲット)を決めることです。
例えば、都内にある女性向けフィットネスジムなら「都内在住の20代以上の女性」とか、経理業務効率改善のツールなら「企業の経理担当者」といった具合です。誰でも使えるような大手の総合通販とかであれば「オンラインサービスを利用する人全般」という形であまり絞らないというパターンもあるかもしれません。

第3段階:マーケティング手法の決定

さて、ここまでで目的とターゲットを決めたら手法を選択します。
手法は様々ありますが、主に以下のようなものがあげられます。 広告費や成果報酬の有無とどこで集客するかの2軸で分けると以下のようなイメージです。

どこで集客するか 広告費がかかる 広告費がかからない 成果報酬
検索結果 検索広告 SEO アフィリエイト
SNS SNS広告
インフルエンサーマーケティング
SNS運用 アフィリエイト
ウェブサイト ディスプレイ広告
純広告
アフィリエイト
アプリストア アプリ広告 ASO アフィリエイト
TV TVCM
交通機関 交通広告
オフライン チラシ 口コミ
アンバサダーマーケティング

上記の中でも
・オンライン上で広告を出すもの
・運用型のもの(純広告以外)
が広告運用で扱うものになります。
主に 検索広告、SNS広告、ディスプレイ広告、アプリ広告 が該当します。
※純広告は期間と予算や露出条件をあらかじめ決めて配信する広告で、日々の細かい運用を行うことができない広告です。

また、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

  • 広告費がかかるものは、費用をかけた分すぐに集客できるメリットがある一方、成果が出る出ないにかかわらず、広告を出した分だけ費用が発生するのがデメリットです。
  • 広告費のかからないものは、費用が発生しないメリットがある一方、集客に時間がかかるデメリットがあります。また、SEOやSNS運用などの専門家に依頼すれば、その分の費用が発生します。
  • 成果報酬型のアフィリエイトは集客をアフィリエイターに依頼でき、成果が出た分だけ報酬を払うので、費用とスピード感のバランスは良いものの、アフィリエイターの管理をしっかりしないとブランドイメージを棄損するリスクがあるのがデメリットです。

実際にはどれかの手法だけを選ぶというよりも、SEOやSNS運用で長期的な施策を打ちながらも、広告やアフィリエイトでスピード感をもって集客するなど、複数の施策を組み合わせるのが一般的です。

第4段階:広告訴求の決定

目的・ターゲット・手法を決めたら次に何を伝えるか(訴求内容)を考えます。
・ブランド認知向上が目的なら、自分たちがどういうサービス・ブランドを扱っているのか?
・興味関心向上が目的なら、それを使うことでどういうメリットがあるのか?
・会員登録が目的なら、会員登録するメリットは何か?
・購入が目的なら、購入後の利用イメージや、今だけの割引情報や特典、人気の商品
などでしょうか。
目的に応じて、ユーザーに伝えたい内容を決めていきます。
また、競合他社にはない独自の売りポイント(USP)を入れられるとよいでしょう。

第5段階:広告配信設計への落とし込み

ここまでで決めた

  • KPI
  • ターゲット
  • 訴求

を具体的な広告の設計に落とし込みます。

KPIとCV地点の決定

KPIから計算して、いくらの広告予算が必要なのか、
1件の成果(CV:コンバージョン)に対していくらまでの広告費(CPA:コンバージョン単価)を許容できるのか?を決定します。
(マーケティング上のKPIを広告上のKPIに落としこみます。)
また、広告上の成果地点をどこにするのか?も決めます。成果地点が複数ある場合は地点ごとに価値付けができると尚良いです。

入札額の決定

1回の広告表示やクリック、成果に対していくらまで入札できるのか?も決めていきます。
この入札金額はクリックからの成果に至る割合(CVR:コンバージョン率)などから計算して決めることができます。
ここは日々の運用で細かく調整していきます。

配信媒体・ターゲットの決定

次にターゲットを決めていきます。
まずは配信する広告媒体を決めます。目的やターゲットの属性に応じて決めていきます。
目的に応じて決めるなら、

  • 直接サービス購入などを狙うならSNS広告やディスプレイ広告上のリターゲティング広告、検索広告
  • サービスの興味関心を狙うならSNS広告やディスプレイ広告
  • サービスの認知向上を狙うならSNS広告上の動画広告

という形で選びます。
これも目的や予算によりますが、複数の媒体を選ぶのが一般的です。
また、ターゲット属性やサービス属性も加味していきます。
例えば、BtoBサービスならビジネスマンの多いFacebook広告やLinktin広告、若年層向けのサービスならSNS広告(特にTiktok広告など)、アパレル通販ならInstagram広告やPinterest広告など。

次に各広告媒体においての具体的なターゲットを決めます。
検索広告なら、広告を出したい検索キーワードを、 ディスプレイ広告ならどういう配信先のサイトやコンテンツ、どういう興味関心を持つ人に広告を出すか、SNS広告ならどういう興味関心を持つ人を対象にするかなどを決めていきます。
また、対象者の年齢や性別、地域、使用するデバイス(PC/スマホ/タブレット/スマートTV)、配信する曜日や時間帯なども併せて考えます。

広告とLPの決定

訴求をどういう文章や画像・動画で伝えるか?(訴求をどういう広告で伝えるか?)を決めていきます。
また、広告をクリックしたときの訪問先として、サイトやアプリのどのページ(LP)に誘導するかなどを考えます。
運用が始まったら、広告の内容やLPはABテストという形で複数パターンを比較して効果を見ていきます。勝てる要素を見つけてよりクリックされやすい、目的の行動につながりやすい広告やLPを見極めていきます。
また、広告とは少しずれますが、LP訪問後の行動率を高めるため、コンテンツの中身や配置、ページ遷移のスピードなどを改善するLPOという手法も行っていきます。

まとめ

長くなりましたが、まとめると以下になります。

  • マーケティング活動の目的とターゲットを決める
  • マーケティング手法を選択する(広告を使う場合は、ターゲットに合わせて広告媒体を決める)
  • 広告の訴求を決める
  • 決めたターゲットや広告訴求を、広告の配信設計に落とし込み入稿する
  • 広告配信が開始したら効果に合わせて予算・入札・ターゲット・広告・LPを調整したり、改善施策のPDCAを回す

広告の調整トリガーは多く、また成果も常に流動的なため運用は複雑で大変ですが、何よりもマーケティング活動の目的を忘れず、KPI達成に向けて改善施策のPDCAを回していくことが大事です。

それでは。

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Kyotaro Yamaoka

横浜国立大学工学部卒。2児の父。重工業系エンジニアを経て、2015年にWebマーケティング業界に参入。電通アイソバーや博報堂DYデジタル、インティメートマージャーなどとの協業経験を経て、ベンチャー企業のリーダー運用者として多様な業種の広告主を支援。2021年に援軍入社。データ分析に強みを持つ理系ディレクター。