インハウスSEOを検討されている企業にとって、効果的なSEO施策を実施するための方法や知識は、今後のSEOサイトを強化していくにあたって非常に重要です。
今回は、様々な弊社クライアントのSEOコンサルティング事例を踏まえて、SEO施策を社内で具体的に実施していく中で知っておくべきメリットやデメリットについてご紹介します。また、よくあるSEOのインハウス化を目指す会社が陥る失敗事例の共通パターンについても説明します。
この記事を読むことで、費用対効果の高い失敗しにくい自社内でのSEO対策スキームを構築し、ターゲットキーワードでの検索順位アップの手助けになれば幸いです。
SEOをインハウス化すべき5つのメリットとは
1. 外注コストの削減・節約((SEO対策費用)
外部のSEO記事ライティングやSEOコンサルティングなどのSEOサービスを利用する場合、多くの企業は月額数十万円は必要になり、大手メディアやECサイトなどの場合、月数百万円の費用がかかるケースも多くあります。特にSEO記事外注については、毎月継続的にかかる費用となるため、Web広告運用と同じように高額なランニングコストとなっている会社も多くあります。
しかし、これまで外注していた施策を全て、または一部でもインハウスSEOに移行することができれば、これらの外注コストが削減でき、さらに社内リソースを最大限に活用でき、また効率的に社内にノウハウをためていくことができます。
特に、中小企業やスタートアップにとってはインハウス化により大幅なコストカットができ、競合サイトとの競争力を維持しながらもSEO対策を継続的に行えます。
当然ながら、社内での人材育成やSEO教育などのトレーニングなどの初期投資コストは必要になりますが、ある程度長期的に見れば、SEOコンサルティングサービスやランサーズやクラウドワークスなどへ外部委託するよりもコストパフォーマンス面でもSEO対策効果の面でも勝る可能性が高いです。
2. ノウハウの蓄積により競争力が強化できる
インハウスSEO対策を進めていくことで、自社のWEB担当者やマーケティングチーム、開発部門にSEOの知識を蓄積することができ、裏側で競合他社との差別化を図ることができます。社内のSEOインハウス化が強化できれば、その節約できた分のお金を広告への投資に回すことで、他社よりも優位性を築くこともできます。
例えば、SEO対策の中でも特に経験が必要になってくる、サイト構造改善や既存記事のリライト、記事内からの自然なテキストリンク(内部リンク)対策などの技術的なスキルは、徐々にナレッジレベルから内部のノウハウへと蓄積されていくことで、外部SEO業者に頼る必要のないSEOスキルを社内で保有できるようになります。
そして、将来的には、社内にはSEO会社より業界の知識がある分だけ、一般的なSEO会社より効果的な自社のビジネスに最適化された戦略が実施できるようになります。
一旦こういう状態になれば、後から競合会社や新規参入会社があなたの業界に参入してきて、SEO施策に高額な費用をかけて挑んできたとしても、基本的にはSEOで負けることはありません。実際にこういった無敵のサイトが、世界中で様々なジャンルで築き上げられてきています。
3.緊急時にも迅速に改修対応できる
外部業者を利用した場合、どうしても対応に時間がかかってしまいます。特に指示しないと対応してくれないことが一般的なので、自社のSEO記事の間違いをX(旧Twitter)などで指摘され、それがバズってしまいプチ炎上みたいなケースが生じた場合、すぐに記事を修正するなどの対応が必要になってきます。
そんな時にも、インハウスでSEO記事を展開している場合であれば、社内の調整だけで柔軟に迅速に修正対応することができ、さらなる炎上リスクを抑えることができます。私の知る限りでは、実際にこれまでメディアなどで炎上している記事の多くは、社内では原稿を作っていない外注記事のケースばかりです。
その他にも、数ヶ月に1回の頻度であるGoogleのアルゴリズムが変更されるSEOコアアップデートなどの際にも、社内での即座な対応が可能となり、マイナスの影響を最小限に抑えたり、SEO強化するために競合のライバルサイトより早く動き、一気に数十記事のリライトを1週間以内に対応することで、順位が負けている競合の上位サイトの検索順位をひっくり返すこともできます。
このような迅速な対応が必要となるSEOサイトとしては、特に競争が激しい業界や法律的な変更をすぐに反映する必要があるジャンル、また季節的なトレンドに影響するサイトなどがありますが、このようなジャンルのサイトでは特に重要な要素になります。
4. SEO対策の柔軟性と施策コントロール
ビジネスの成長や市場変化に応じて、SEO戦略を定期的に見直す必要があります。特に、マーケティングの方向性やキャンペーンなどの変更が必要な場合は、インハウスSEOで動いているのであれば、その変更を即時に社内で反映できます。
しかし、外注などの外部委託では、SEO施策の変更にはスケジュール調整が必要なケースが多く、追加費用が発生したり、迅速に対応してもらえず、対応が遅れるリスクがあります。
一方で、社内での修正対応ならば、臨機応変に変更や調整が行えるため、常に最新のトレンドやビジネス環境に対応することができるのが大きなメリットの一つです。
また、SEO施策は、日々のデータ分析も重要です。インハウスでSEOを行う場合、Google Analytics(GA4)やSearch Console,ターゲットキーワードの検索順位計測などのツールを活用して、ほぼリアルタイムでデータを収集・分析し、施策の決定や効果の分析をすることができます。
※インハウスSEOで活用すべきおすすめのSEOツールについては記事後半に掲載しております。
そして、このリアルタイムデータに基づいて、新規記事のためのキーワード戦略やリライトによるコンテンツの最適化、最近のSEO効果として比重が高まってきたユーザーエクスペリエンス(UX)の改善などについても素早く対応することができます。
5. ブランドメッセージの一貫性の担保
インハウスSEOを行うことで、自社ブランドの思いや価値観がしっかりと反映されたコンテンツが発信できます。
一方で、外部委託にSEO対策を依頼すると、ブランドの細かなニュアンスやメッセージが正確に伝わらないことがあり、結果として、SEO施策がブランドイメージとずれてファンが作れない、あるいはペルソナで想定していた顧客と実際の顧客の性質が全く異なるようなリスクが生じる可能性があります。
具体的には、コンバージョンに繋がりやすいSEO記事内に設置しているCTAボタンテキストやCTA内のマイクロコピー、CTA直前の誘導文などのクロージングに繋がるポイントは、会社としての価値観や訴求などを反映すべき重要な要素です。
こういった重要なポイントを丸投げして、SEO会社やLPO会社、コピーライターなどに外注し、CTRやコンバージョン数だけをKPIとしていると、実際には想定と違う顧客性質や高い解約率、ファン化しないなどのリスクも生じやすいです。
自社内でSEOをインハウス化することによって、マーケティング戦略全体の一貫性を保つことができ、さらに自社のブランド価値の棄損を防ぐこともできます。
インハウスSEOで生じる4つのデメリットとは
1. 専門的なSEO知識や経験が必要
SEOの世界は非常に技術的で複雑と考えられています。SEOの評価基準は数100~数千とも言われています。そのため、 SEO対策のWEB担当者は、アルゴリズムへの理解や、SEOキーワードのリサーチ(チェック及び判断方法)、サイトの構造など技術的な最適化など、多くの知識や経験(ノウハウ)が必要になってきます。
これらの知識を社内で構築していくには、数ヶ月間などでは難しく年単位で、SEOの教育やトレーニング、振り返り、仮説検証などが欠かせません。最初から一切外部のSEO業者に頼らない場合、これらのタスクを全て自社内で賄うため、多くの人的リソースや時間が必要となります。
2. 継続的な人材のリソース投入が必要
先ほど説明したようにSEOのインハウス化は、数ヶ月で社内で簡単に回るようになるような簡単なものではありません。実際にはSEO記事のみなどであれば、社内にライターがいれば数ヶ月でSEO記事の内製化は可能だったりはしますが。
ただし、SEO施策は一度実施したら終わりではないケースの方が多いです。例えば、SEO記事を作って公開してもそれで終わりではありません。実際には、記事公開から2~3ヶ月後には記事の順位や流入クエリなどの状況を確認し、記事のリライト修正が必要かどうかを判断する必要があります。
競合サイトがドメインパワーが強い競合ばかりだったりすると、頻繁に記事の見直しや新規記事の追加などを絶えず実施していく必要があり、少しでもサイト更新をサボると、一気に競合サイトに置いていかれることがあるくらいSEOの競争は激しいため、限られたリソースの中で、他のWEB業務と兼用する担当者では、継続的にアウトプットしていくSEO実務は、SEO専任の担当者をつけられない場合は、SEO施策が疎かになってしまい、結局内製化せずに外注化していた方がビジネスが上手く回っていたなんていうこともあります。
3. SEO施策は成果がすぐに出にくい(見えにくい)
SEOは中長期的な戦略であり、広告出稿などとは異なり、すぐに結果や成果が出るわけではありません。実際には、様々な施策によって、SEOの効果(結果)が出るまでの期間は以下のようなイメージです。
各種SEO施策で効果が出るまでの目安期間
※条件:自社ドメイン内でSEOメディアを運営し、3年以上の運営履歴があるサイトのケース
SEO施策例 | 結果が出るまでの期間 |
---|---|
新規記事 | 公開後2~3ヶ月後〜 |
既存記事のリライト | 修正後1ヶ月後〜 |
内部リンク対策 | 修正後1ヶ月後〜 |
このようにインハウスSEOを始めたとしても、すぐに驚くような結果が出ないとうう点はご理解ください。少なくとも施策後1ヶ月間は、順位変化などについて一喜一憂せず、何もせず様子見する(静観する)ことが必要です。数週間など短期間で成果を出すことを前提で動いたり、施策後に焦ってすぐにまた他の施策などを行ってしまうと、リソースが全て無駄になってしまうだけでなく、内部の担当者のモチベーションが低下するリスクがあるのでご注意ください。
4. 知識の属人化リスク
SEOをインハウス化するためにSEOに詳しい専門家を雇用したりすることで、一時的に社内のSEOレベルはあげることができます。しかし、特定の担当者にSEOの知識やスキルが依存している場合は非常にリスキーです。
その理由は、その人がもし離職してしまうと、社内でのSEO施策が以前のようにスムーズなPDCAが回らなくなってしまうケースがあるからです。それだけでなく、SEO記事制作(記事更新)やリライト、定期的な内部リンク、外部リンクチェックなどなどSEOの知識やノウハウがすっぽり抜け落ちてしまうリスクがあります。
このようなリスクを防ぐためには、SEOの担当者は1人に依存せず、複数の担当者にSEOの知識やスキルを分散させることが重要です。また、合わせて社内でのSEOマニュアルを作り、ナレッジの共有を徹底することが大切です。
インハウス化の成功の鍵を握る5つの法則
1. SEO専任者の配置と育成
まず、インハウスSEOを成功させるためには、専門的な知識や経験を持つSEO担当者の配置が必須です。社内に専任者を配置し、その担当者には定期的にSEOの研修やセミナー、YouTube動画などで基本的なSEOの歴史や知識、SEOコアアップデートなどがあった時の対処法などを学び、常に最新のSEOに関する知識をアップデートしていくことが必要です。
SEO施策は、効果や売上がチリツモで増えていくストック型の施策なので、長期的に見れば、インハウス化によりSEOにかけるコストを徐々に減らしていきながら、自然検索経由(オーガニック経由)での売上を右肩上がりで伸ばしていくことができます。そのため、インハウスSEOを目指すのであれば、まずは知識や経験豊富なSEO担当者を採用するか、インハウスSEOを支援しているような会社に依頼して社内にノウハウを溜めていき、徐々に自立していく流れを作ることが重要です。
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2. SEOツールの活用
インハウスSEOを効率化するには、SEOに関連する適切なツールの利用は必須になります。SEO対策の必須ツールとしては、以下のようなツールが一例になります。
■Google Analytics 4 (GA4) ※無料ツール
SEO領域では、特に各記事のセッション数やエンゲージメントなどの定量分析、経路分析、オーガニック経由のコンバージョン数などをチェック
■Google Search Console (GSC) ※無料ツール
流入クエリやターゲットキーワードでの検索順位などを確認。また各記事のセッション数やエンゲージメントなどをチェック
■ChatGPT 4o(GPT o1) ※有料ツール
競合調査や市場分析、記事タイトル案、構成案出し、一次原稿の作成、記事の校閲など様々な用途で活用 ※生成AIにSEO記事を作らせてそのまま記事公開は絶対にNG
■Ubersuggest ※有料ツール
SEO記事を作る際にどのようなキーワードで作るべきかを、検索ボリュームやSEO難易度を元に優先順位などを判断することができます。
■GRC ※有料ツール
ターゲットキーワードの検索順位を毎日計測できる順位チェックツール。最近ではBing経由のコンバージョン数が増えている業界も多いため、Google, Yahoo!, Bingの検索順位を追っていくことが望ましい。
※検索順位チェックツールは、各検索エンジンについて、指定キーワードでの順位計測ができればどのツールでも大きな違いはないので、他の日本の順位計測ツールだと、BULLやミエルカ、外国ツールだとAhrefs, Moz Proの「Rank Tracker」などでも問題ない
■SEMRush ※有料ツール
競合調査ツールとして、自社サイトと競合のSEO比較が簡単に実施できます。競合より順位が低いキーワード一覧や競合がしれっと上位表示している隠れキーワードなどを掘り起こすことができます。
■Looker Studio ※無料ツール
SEOコンサルティング会社から発行されるような月別グラフなどがビジュアル化されたSEOレポートをGA4やサチコなどのデータと連携してカスタマイズすることで閲覧できます。
これらのツールは一例ですが、SEO関連ツールを上手に活用することで、社内のみでSEO対策を効率的に進めていくことができるようになります。
3. 定期的なSEO施策の結果分析と改善対応
SEO対策は一度施策を行えば終わりというものではなく、むしろ始まりです。何かSEO施策を実行したら、一定の時間をかけてその結果を分析するという効果検証作業が必ず必要になります。その経時変化を踏まえて、更なる改善施策案を検討して実施していくといったPDCAサイクルが重要です。
特に、1年に数回あるGoogleの検索アルゴリズムが大きく変わるSEOコアアップデートのタイミングでは、様々なキーワードの検索順位が大きく変動することがあります。こういった大きな変化にも柔軟に適切な施策タイミングを見計らい、自社でSEO対策の仮説検証ができるようになる必要があります。
4. SEO部門以外との連携強化が費用対効果の鍵
SEO施策はマーケティング施策の中の一つにすぎません。一般的には広告運用や開発、制作部門のように別の関連部署や担当者がいるケースが多いです。これらの部門間で情報共有するために、WEBマーケ全体を見れるようなマーケティング部署やマーケティングリーダーが重要になります。
例えば、広告運用とSEO運用の両方を把握できれば、広告運用でコンバージョンレート(CVR)が高いキーワードや想定していなかったコンバージョンに繋がるキーワードなどが見つかれば、そのキーワードでSEO記事を作ることで、SEOの競合サイトにバレずに自社だけがオーガニック経由でコンバージョン数を伸ばしていくことができます。
またサイトのデザインや構造面などでも、SEO面から見たデザイン設計や導線設計なども考慮することで、SEOの個別記事から誘導効率(クリック率)が高い誘導バナーなどの設置なども実現できたりもします。
5. 最新SEO情報のキャッチアップ
SEOの仕組みは毎日変化していて、特に大きな変化がある際には、Googleからアルゴリズム変更の発表があります。特にここ最近は事前にいつからアルゴリズムのアップデートが行われて、いつ頃終わるかなども事前告知されることが多くなってきたので、心の準備や対策がしやすいようになってきました。
検索アルゴリズムアップデート(SEOコアアップデートなど)中は、SEO施策(記事のリライトなど)やサイトの改修などは控えた方が良いので、事前にアップデートが発表されることで、こういったSEO施策のスケジュール調整もしやすくなります。
このように、SEOのコアアップデートが行われるなどの情報についても、発表されたら瞬時に情報をキャッチアップできる体制や仕組みを作っていくことが重要です。また、SEOのセミナーなどに参加したり、SEO業界の最新ニュースをSEOメディアやYouTube、X(旧Twitter)などでチェックすることで、最新のSEOトレンドに基づいたSEO対策が行えます。
まとめ
SEO施策のインハウス化は自社のみで仕組みを構築するには非常に大変であり、以下の図のようにインハウス化によるメリットだけでなくリスクやデメリットもあるので、その両方を考慮して実施するかしないかを判断する必要があります。
ただし、一度インハウス化の仕組みが出来上がり、 専任者や兼任する複数のSEO担当者を育成し組織化することができれば、社内のみでSEO対策を継続的に進めていくことができます。また、各SEO施策の結果を社内にフィードバックしていくことで、徐々にSEOの知見やノウハウが溜まっていき、会社全体としてのSEOスキルが毎年のように積み上がっていくSEO成功スパイラルを作ることができます。
インハウス化を構築するまでには、人材や実務レベルで様々な問題が出てきますが、それぞれの問題をクリアしていくことで、SEO対策の長期的なコスト削減を達成することができるので、是非積極的にインハウス化に挑戦していきましょう。
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Takenori Kawabata
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