インハウスWebディレクターは、自社内でWebサイトやプロダクトの成長に直接貢献する重要な役割を担います。自社サービス、プロダクトを成功に導くための重要なポジションです。

本記事では、インハウスWebディレクターの仕事内容やメリットデメリット、活躍するために必要なスキルについて詳しく解説します。

インハウスWebディレクターとは

インハウスWebディレクターは、自社内でWebサイトやプロダクトの運用・管理を行う専門職です。自社のサービスやプロダクトに深く関与し、その成長と発展に直接寄与します。インハウスWebディレクターの業務範囲は非常に広いです。デザイン改修、コンテンツ拡充、広告やSEO対策などマーケティング業務、UX改善、最近ではSNSの運用管理など、多岐にわたります。

それでは一つ一つ見ていきましょう。

基本的な5つの仕事内容

①自社サービスの運用・更新

インハウスWebディレクターの基本的な業務の一つに、自社のWebサイトやメディアサイトの運用・更新があります。新しいコンテンツの追加や、既存情報のアップデートを行うことはもちろん、UI/UXデザインの改善や、SEO観点からの改善、最適化も含まれています。

たとえば、訪問者の行動データを分析し、ページの改良を行うことで、ユーザーの離脱率を下げ、コンバージョン率を向上させます。こうした日々の細かな改善作業もインハウスWebディレクターの業務となります。

②ワイヤーフレームの作成

新しいページを追加する時には、ワイヤーフレームの作成が不可欠です。インハウスWebディレクターは、UI/UXの観点やマーケティング戦略を基に最適なページレイアウトを設計し、それをデザイナーや開発チームに伝える役割を果たします。

ワイヤーフレームはデザイナーがデザインする上で重要なポイントとなりますので、デザイナーにも意図がしっかり伝わるように配慮して作成しましょう。

③ミーティングと指示出し

プロジェクトを円滑に進めるためには、関係部署との密なコミュニケーションが欠かせません。インハウスWebディレクターは、マーケティングチームやデザインチーム、開発チームなど多岐にわたる部署と連携を取り、プロジェクトの進捗を管理し、必要な指示を適切に出します。また、時には上司や役員への進捗報告を行い、その結果をチーム、関係者にフィードバックします。全員が同じゴールに向かって進むための共通理解を持ってもらえるように、しっかりコミュニケーションをとりましょう。

④制作物のチェックやフィードバック

デザイナーやシステム担当者から提出された制作物の確認やフィードバックも、インハウスWebディレクターの重要な役割です。制作されたデザインやコンテンツが、ブランド基準やプロジェクトの目的に合致しているかをチェックし、修正が必要な点をフィードバックします。修正が簡易的なものであれば口頭指示やチャットで、複数の修正依頼があれば指示書を作成することもあります。

⑤データ分析と改善提案

インハウスWebディレクターは、データ分析を通じてWebサイトのパフォーマンスを把握し、改善提案を行います。GA4などのツールを用いて、ユーザーの行動やサイトのパフォーマンスを詳しく分析します。例えば、訪問者の流入経路や離脱ページ、滞在時間などのデータを基に、改善すべき点を見つけ出し、具体的な施策を提案します。

SEO対策をして流入数を増やしたいときにはキーワードの分析や選定、対策ページや方法を検討する必要もあります。

また、Web広告を実施している場合、広告の数値も把握しておく必要があります。代理店を使っている場合は、代理店からの改善提案を受けて、実施可否の判断を行います。この辺りはマーケティングチームが担う場合もありますが、インハウスWebディレクターが兼務している場合も多いでしょう。

インハウスWebディレクターのメリット

インハウスWebディレクターのメリット

インハウスWebディレクターとして仕事をする上でのメリットは主に以下の3つです。

  • クライアントに振り回されない
  • 業務内容や仕事の幅が広がる
  • 自社のプロダクトの成長に直接貢献できる

クライアントに振り回されない

代理店や制作会社だとクライアントとのスケジュール調整や要望によって振り回されることがありますが、インハウスWebディレクターであればそういった外部の要望に振り回されることはありません。

社内での各部署の連携はありますので、調整が全くないわけではないですが、無理難題を突き付けられることは少ないでしょう。

業務内容や仕事の幅が広がる

インハウスWebディレクターの業務は幅広いです。Webデザインから開発ディレクション、マーケティングに関わる部分まで多岐にわたります。自社のプロダクトや、Webサイトに関わる全体を見るポジションであるため、覚えることも多く大変な業務ではありますが、確実にスキルの幅は広がります。

自社のプロダクトの成長に直接貢献できる

インハウスWebディレクターとして自社のプロダクトやWebサイトの改善に携われるため、自社のプロダクトやWebサイトの成長を実感しやすいというメリットがあります。自身が手掛けた改善策によって、大きく数値が上向けば改善をより実感できて、やりがいを感じることができます。

インハウスWebディレクターのデメリット

インハウスWebディレクターのデメリット

インハウスWebディレクターのデメリットもご紹介します。

  • 人員調整、予算調整など社内雑務が多い
  • インプットが少なくなりがち

人員調整、予算調整など社内雑務が多い

社外クライアントとの調整はないものの、社内での各部署との調整は多く発生します。

そのため、調整力、コミュニケーション力が求められます。また、Webディレクション以外の調整も多く発生するでしょう。人員の調整、予算の調整など。そういった煩雑な業務はやりたくないという人には向いていないかもしれません。

インプットが少なくなりがち

代理店や制作会社にいると、いろいろな業種のクライアントと仕事をします。そのため、様々なデザインや設計に触れることも多く、また代理店であれば入ってくる情報量も多いため、自然とインプットが増えます。事業会社側にいると、放っておくと情報があまり入ってこないため、自分から取りに行く必要があります。社外の勉強会に参加する、社外の人とのコミュニケーションを増やすなどして、インプットを増やすことが必要です。

インハウスWebディレクターに必要なスキル

インハウスWebディレクターに必要なスキル

インハウスWebディレクターには、多様なスキルが求められます。今回は、インハウスWebディレクターとして活躍するために必要な5つのスキルについて、詳しく解説します。

コミュニケーション力とプロジェクト管理能力

まず第一に、コミュニケーション力はインハウスWebディレクターにとって欠かせないスキルです。デメリットのところでも触れましたが、社内調整が非常に多いです。また場合によっては協力会社など社外との調整も必要となります。チーム内外の関係者とのスムーズな情報共有や調整を行うため、高いコミュニケーション能力が必要です。

インハウスWebディレクターは、開発者やデザイナー、マーケティング担当者、経営陣など、さまざまな立場の人々と関わります。そのため、意見の違いや立場の違いが発生することも少なくありません。こうした場合、インハウスWebディレクターはプロジェクト全体のゴールを見据えながら、各メンバーの意見を調整し、適切な方向性を示すことが求められます。コミュニケーション≒調整力と言ってもいいかもしれません。それぐらい調整する場面が多いです。

加えて、プロジェクト管理能力も非常に重要です。プロジェクトには、明確な納期や予算が設定されています。複数の部署や関係者が絡むといろいろな問題も発生します。インハウスWebディレクターはその時々で課題解決をしながら、軌道修正を行い、決められた期間の中で適切にスケジュールを進行させることが求められます。

技術的な理解力とデザイン経験

インハウスWebディレクターには、技術的な理解力も求められます。HTML、CSS、JavaScriptといったWeb技術の基本を理解していると、開発チームとのコミュニケーションがスムーズに行え、現実的かつ効果的なプランを策定することが可能です。また、開発工程で発生する技術的な問題にも、インハウスWebディレクター自身がある程度理解していることで、迅速かつ適切に対応することができます。

さらに、インハウスWebディレクターにはWebデザインの経験も求められます。社内のデザイナーとコミュニケーションをとる上でもデザインの経験があったほうがよりスムーズです。ユーザーにとって魅力的なWebサイトを提供するためにも、デザインに対する知見や経験を持っている方が有利です。

データ分析能力

現代のWebサイト運用において、データ分析能力は欠かせないスキルです。デジタルマーケティングにおいては、ユーザー行動を数値で追跡し、そのデータを元に改善策を立てる必要があります。インハウスWebディレクターも、データを活用して戦略的な意思決定を行う必要があります。GA4やSearch Console、ヒートマップツールなどを使って、Webサイトのパフォーマンスを定量的に評価し、改善点を見つけ出します。

例えば、GA4のファネルデータ探索を活用して、離脱率が高いページの内容を再検討し、ユーザーの興味を引くコンテンツに変更したり、ページ内のナビゲーションを改善することで、コンバージョン率の向上を図ることができます。

チームをリードするリーダーシップ

インハウスWebディレクターは、単なるプロジェクトマネージャーではなく、チームを率いるリーダーとしての役割も果たします。特に、各部門からの意見を取りまとめ、プロジェクトの最終的な意思決定を行う場面では、リーダーシップが求められます。時には困難な決断を下すこともありますが、メンバー全員が最善を尽くせる環境を作ることがインハウスWebディレクターの重要な任務です。

上から下からの板挟みになることもあるかもしれませんが、めげない精神も必要かもしれないですね。

継続的な学習と自己成長

最後に、Web業界は日々変化しているため、インハウスWebディレクターには継続的な学習と自己成長の意識が必要です。新しい技術やツール、トレンドが次々と登場する中で、業界の最新情報をキャッチアップし、自分自身のスキルを磨き続けることが必要です。

例えば、セミナーや勉強会に参加したり、最新のニュースをチェックすることで新しい知識を取り入れます。また、お付き合いのある代理店から提案をもらったり、情報を定期的にもらえる環境を作っておくことも重要です。異なる業界の成功事例や新しいアプローチに触れることで、視野を広げ、自社のプロジェクトに生かすことができます。

常に新しい知識を学び、自己成長を続ける姿勢が、インハウスWebディレクターとしてのキャリアを長期的に成功させるための重要なポイントです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?インハウスWebディレクターの業務は非常に多岐に及び大変なことも多いです。しかしながら自社サービスやプロダクトの成長を直に実感できるポジションでもあるため、非常にやりがいがある職種です。

成功するためには、コミュニケーション力、プロジェクト管理能力、技術的な理解力、デザインの基礎的な理解、データ分析能力など、幅広いスキルを備えることが必要です。まだすべてのスキルを持っていないとしても、挑戦することで確実にスキルアップできる職種だといえるでしょう。

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Junichi Nakamura

前職は大手ネット広告代理店のインターネットプロモーション部門の部長。マネジメント兼プランナー/ディレクターとして、SEM、ディスプレイ領域中心に、業界問わず大手クライアントのプロモーション支援を行う。現場に拘り、コツコツと改善施策を積み上げながら、着実に改善に繋げていく職人。