カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスを知り、購入し、利用するまでの一連のプロセスを時系列でまとめたものです。サービスや商品を販売していく際に、カスタマージャーニーマップがあると、顧客体験を深く理解した上で、適切なマーケティング戦略を立案することができます。本記事では、初心者でも取り組みやすい方法で、カスタマージャーニーマップの作り方を詳しく解説します。

1. ゴールを設定しよう

ゴールを設定しよう

 

カスタマージャーニーマップを作成する手順としての第一歩は、明確なゴールを設定することです。何を達成したいのかが明確でなければ、マップを作成しても意味がありません。ゴールが具体的であればあるほど、マップの構成やマーケティング戦略が精密になります。

ゴール設定の例

  • 新規顧客の獲得
  • 新しい顧客にリーチし、サービスを使ってもらう。

  • 購買プロセスの簡素化
  • 購入に至るまでのハードルを減らし、スムーズな購入体験を提供する。

  • 顧客満足度の向上
  • 製品やサービスの利用時も不満を解消して、継続率を高める。

ゴールを明確にすることで、どのフェーズに最も注力するべきかがはっきりし、具体的な施策を立案しやすくなります。

2. ペルソナを設定しよう

ペルソナを設定しよう

次にターゲット顧客のペルソナを設定します。ペルソナとは商品やサービスを購入、利用する顧客の具体的な人物像のことです。より具体的に設定することで、顧客の視点に立ったマーケティング戦略を立案できます。

ペルソナ作成時のポイント

  • 基本情報
  • 年齢、性別、職業、居住地などのデモグラフィックデータ。

  • 行動パターン
  • どのように情報収集を行い、どのチャネルをよく利用するか。

  • 課題や悩み
  • どのような悩みを抱えているか。

  • 心理的要素
  • 購入を決定する際の動機や感情は?

「40代後半の会社員男性、年収600万円。東京で妻と二人暮らし、趣味は映画鑑賞。オンラインで購入することが多いが、口コミを重視する。普段は家で妻の手料理を食べるが、休日は妻と外食が多い。高いブランド物には興味がなく、安くて質の良いものを好む。」

性別や年齢だけでなく、出身地や学歴、職歴、年収、ライフスタイル、家族構成、趣味嗜好、休日の過ごし方、価値観など、あらゆる属性を具体的に書いてみましょう。実際にそのような人がいるとイメージできるとベストです。

ペルソナを明確にすることで、具体的なシナリオを想定しやすくなります。ペルソナを作る際は実際の顧客にアンケート調査したり、口コミやユーザーの意見を取り入れると良いです。

3. ステップを設定しよう

ステップを設定しよう

顧客が商品やサービスを知り、購入し、評価に至るまでのプロセスをいくつかのステップに分けます。このプロセスを整理することで、顧客の購買に至る過程を理解しやすくなります。

一般的なステップ例

  1. 認知
  2. 商品やサービスを知る。

  3. 興味・関心
  4. 商品に対して興味を持つ。

  5. 情報収集
  6. 製品やサービスについて、自ら詳細な情報を調べる。

  7. 比較検討
  8. 口コミを確認したり、競合商品と比較して検討する。

  9. 購入
  10. 最終的に購入、申し込みを決断する。

  11. 利用
  12. 商品を使ってみる。

  13. 評価
  14. 製品やサービスに愛着を持ち、リピートや推薦に至る。

ユーザーが、製品やサービスを必要としはじめるタイミングから、リピート購入するところまでのタッチポイントを整理することが大事です。

4. タッチポイントとチャネルを洗い出そう

タッチポイントとチャネルの洗い出し

顧客が各ステップで接触するタッチポイント(接点)やチャネル(手段)を特定します。これにより、顧客がどのように情報を得て行動を決定しているのかを可視化できます。

具体例

  • 認知
  • SNS広告、YouTube、テレビCM。

  • 情報収集
  • 企業のウェブサイト、比較サイト、ウェビナー。

  • 購入
  • ECサイト、店舗、カスタマーサポート。

顧客が利用するチャネルを正確に理解することで、効果的なマーケティング戦略を立案できます。

また、各接点での顧客の体験や感情を分析するによって、より深いインサイトが得られます、その結果、顧客がどの段階やタイミングでストレスを感じていたり、満足度が高まったりしているのかを把握でき、様々な改善点が見つけられます。

5. 顧客の行動と感情を整理しよう

顧客の行動と感情の分析

各ステップで顧客がどのような行動を取り、どのような感情を抱いているのかを認識し整理しましょう。これにより、顧客体験の向上に向けた具体的な施策を導き出せます。

分析の視点

  • 行動の詳細
  • どのタイミングで情報を得て、どのようなアクションを取るのか。

  • 感情の変化
  • 期待、不安、満足感など、ポジティブ・ネガティブ双方の感情を考慮する。

  • 課題や障壁
  • どの段階でつまずいているのか。

「購入のステップで、入力項目が多くてイライラしてしまう。」

顧客の行動や感情を把握することで、具体的な改善策に繋げることができます。

6. 課題を特定し、施策を立案する

課題を特定し、施策を立案する

カスタマージャーニーマップを作成する上で、顧客が各ステップで直面する課題を明確にすることは非常に重要です。課題を特定することで、それに対する具体的な改善策を立案し、顧客体験を向上させることが可能です。

課題の例と施策

フェーズ 課題 施策
①認知 ブランドが知られていない SNSキャンペーンを展開し、ブランド認知度を向上させる。また、定めたターゲット層に向けた動画広告を実施する。
②情報収集 欲しい情報が見つからない ウェビナーを実施して商品情報を分かりやすく伝える。さらに、サイト内に動画コンテンツを用意して視覚的に分かりやすく伝える。
③購入 購入手続きが煩雑で離脱する ゲスト購入機能を提供してアカウント登録のプロセスを省略する。
④評価 口コミが少ない。 お友達紹介キャンペーンの実施。顧客に口コミ投稿を依頼して、投稿者にクーポンを提供。

課題ごとに具体的な施策を設定することで、カスタマージャーニーマップは現実的で効果的なマーケティング戦略の基盤となります。

7. マッピング

マッピング

これまで整理した情報を基に、実際にカスタマージャーニーマップを作成します。これをマッピング(マップ化)といいます。このステップでは、マップを視覚的に分かりやすくすることがポイントです。

マッピングの構成は?

  • 横軸
  • 時間軸としてステップを配置(認知、興味・関心、情報収集、比較検討、購入、利用、評価など)。

  • 縦軸
  • 以下の項目を記載
    ・顧客の行動
    ・顧客の感情(ポジティブ/ネガティブ)
    ・タッチポイント(ウェブサイト、SNS、店舗など)
    ・課題と施策

マッピングのメリットとは?

  • 一目で顧客の旅路が理解できる。
  • ステップごとの課題や顧客の感情の変化が把握しやすい。
  • チーム内での顧客理解が共通化される。

実例

ステップ 行動 感情 タッチポイント 課題 施策
認知 動画を視聴する 興味を持つ YouTube ブランドが知られていない 動画広告を実施する
購入 カートに商品を追加 めんどくさい ECサイト アカウント登録が必須 ゲスト購入機能を導入

このような形でマッピングを行うと、全体像を簡単に把握でき、施策の実行がスムーズになります。

8. KPIの設定とモニタリング

KPIの設定とモニタリング

カスタマージャーニーマップの効果を最大化するためには、各ステップごとにKPI(Key Performance Indicators、重要業績評価指標)を設定することが必要です。KPIは、施策の効果を数値で測定し、マーケティング戦略の進捗を確認するための重要な指標です。

KPIの例

  • 認知フェーズ
  • 動画の視聴回数、サービス名の検索数、SNSのエンゲージメント率(いいね数など)

  • 比較検討フェーズ
  • ウェビナーの参加人数、資料ダウンロード数

  • 購入フェーズ
  • コンバージョン率(購入に至った率)、カート離脱率

  • 評価フェーズ
  • 口コミ件数、高評価のレビュー数

モニタリングのポイント

  • 定期的にデータを集計して、施策の効果を分析する。
  • 数値に基づいて改善策を検討し、カスタマージャーニーマップも更新する。
  • 場合によってはKPI自体も見直して変更する。

9. マップを共有する

マップを共有する

完成したカスタマージャーニーマップは、チーム内で共有し、実際のマーケティング活動に活用します。これにより、チームメンバー全員が共通した顧客理解を持って、マーケティング活動や課題解決ができます。

共有方法の例

  • 社内プレゼンテーション
  • カスタマージャーニーマップを説明し、全員の意識を統一する。説明は一度きりではなく、継続的に実施することが重要!

  • 資料配布や共有ドライブでの管理
  • スプレッドシートやPDFなど決まった形式で配布する。チームの共有ドライブ内で共有する。

マップを社内やチーム内で共有することで、マーケティング施策が一貫性を持ち、顧客対応がスムーズに実施できるようになります。

10. 定期的なマップの見直しが重要

定期的なマップの見直し

カスタマージャーニーマップは一度作成したら終わりではありません。顧客のニーズや市場環境が変化する中で、最初に作ったマップを定期的に自社で見直し、必要に応じて改善していくことが重要です。

更新のタイミング

  • 市場に大きな変化があったとき
  • 顧客の行動パターンが変化したとき
  • 想定していたステップに違和感がでたとき
  • 新しいマーケティング施策を実施する前後

顧客の行動や感情を深く観察し、問題点などを洗い出し定期的に更新するようにしましょう。常に最新のカスタマージャーニーマップがあれば、チーム全体で顧客のニーズを共有できて、効果的なマーケティング施策が実行できるようになります。

まとめ

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客視点からビジネスを見直すための便利な手法です。課題の特定、KPIの設定、マップの共有と更新を適切に行うことで、顧客満足度の向上や売上の拡大につなげることができます。最初は作るのが大変ではありますが、本記事を参考に、ぜひカスタマージャーニーマップの作成に取り組んでみてください。

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Junichi Nakamura

前職は大手ネット広告代理店のインターネットプロモーション部門の部長。マネジメント兼プランナー/ディレクターとして、SEM、ディスプレイ領域中心に、業界問わず大手クライアントのプロモーション支援を行う。現場に拘り、コツコツと改善施策を積み上げながら、着実に改善に繋げていく職人。