インハウスマーケティング(インハウス化)とは広告代理店などに依頼せずに、広告運用を社内のリソースで行うことを指します。外注コストの削減や、社内にノウハウを蓄積できることから、近年導入している企業が増えています。
本記事では、企業が広告のインハウス化を進める上でのメリットとデメリットを詳しく解説。成功するための秘訣や、抑えておきたい注意点を紹介します。
インハウスマーケティングのメリット
インハウスマーケティングを導入することで得られる最大のメリットは、コストの削減と方針の策定や施策のPDCAサイクルの高速化が上げられますが、具体的にはどのような利点があるのでしょうか。詳しく見ていきます。
コストの削減
まずは、コストの削減です。これまで外注先(広告代理店)に支払っていた運用手数料がまるっと削減されるため、CPAの低減がすぐにでも実感できます。またこれまで実施してこなかった施策にコストを回しテストマーケティングを行い、新たな発見や獲得チャネルの創出にもつながります。
ノウハウ・ナレッジの蓄積
広告運用に関するノウハウが社内に蓄積される事もメリットの一つです。自社の顧客に対して最も適した広告戦略を社内で構築、それらを実践し結果を確認、次のアクションに繋げるといった一連のサイクルをこなしていく事で、運用スキルも上がり、結果的に広告の効果も向上します。社員がこのサイクルを実践していく事でスキルを高め、長期的にはマーケティングチーム全体の力を底上げしていくことが可能です。
運用のPDCA高速化
クリエイティブの変更やターゲティングの見直しといった事が自社内で完結するため、すぐに変更内容を反映することができます。代理店が介在する場合、代理店がクリエイティブを制作・テキスト案制作・ターゲット案出しを行い、依頼主に確認を行うフローが発生します。さらに代理店担当者は他の案件も多く抱えているケースが多いため、他に優先度が高い業務を抱えている場合は後回しにされてしまうケースも往々にして発生します。
時間的なアドバンテージも味方にできるのがインハウス化のメリットと言えます。
インハウスマーケティングのデメリット
では、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
リソースの確保
社内で広告運用を行うとなると、ある程度、運用業務を専門的にこなすメンバーの確保が必要になります。広告媒体が複数あったり、広告を配信するサービスが多岐にわたると、一人での対応が難しくなるため、運用者を補完する必要が出てきます。広告運用だけではない他の業務もある中で、運用がおろそかになり結果効果を悪化させるといったリスクもあります。
また、インハウス化をスピード感をもって進めるためには、経験者の採用も重要です。特にスキルの高いデジタルマーケターは市場価値が高く採用するには時間とコストがかかってきます。
また、せっかく育ってきたインハウス運用担当者が退職してしまうとなると、また一から運用者の育成、人材確保の対応が必要になるため、ナレッジ、ノウハウが蓄積できるような管理体制・チームビルティングが必要不可決になります。
初期投資や時間がかかる
インハウスマーケティング立ち上げ後、安定的に広告運用を回せるようになるには費用や時間がかかります。広告運用を行うための研修やセミナーの参加や、データ管理に必要なツール導入など、初期費用がかかってきます。また、広告運用のスキルを習得するのに、ある程度の時間がかかることもデメリットです。短期的にコストがかかったり、初動は成果が安定しないなどがあるため、インハウス化は中長期的な投資と捉える必要があります。
ノウハウや情報が入ってこない
広告代理店が持つ豊富な経験やノウハウ・最新の情報が入ってこなくなるリスクがあります。特に、変化の速いデジタル広告のトレンドや技術に追いつくためには、常にアンテナを立てて情報をピックアップする必要があります。もしそのプロセスが滞ると、競合他社よりもマーケティング施策が遅れ、競争力を失うリスクがあります。
インハウスマーケティングを成功させるためのポイント
インハウス化を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。インハウスマーケティングの運用をより効率的且つ、効果的にするための具体的なアプローチを紹介します。
マーケターの採用とチームの育成
インハウスマーケティングを成功させるために最も重要な要素の一つが、適切な人材の採用です。マーケティングとひとことで言ってもその範囲は広く、SEO(検索エンジン最適化)、コンテンツマーケティング、デジタル広告の運用、データ分析、SNSマーケティングなど、幅広い分野に精通している必要があります。
これらのスキルをすでに持っている人材を確保することが理想的ですが、社内で育成することも十分可能です。定期的に研修や勉強会などのトレーニングを行い、最新のマーケティングトレンドやツールを学ぶ機会を設けることで、チーム全体のスキル向上を図ります。媒体社が用意しているスキルアップの講座や学習材料もあるため、それらを用いてスキルや知識を高めていきます。
チームでノウハウを蓄積(属人化しない)
インハウスマーケティングを行ううえで注意しておきたい点としては、業務の属人化です。特定の社員が全ての業務を把握していると、その社員が退職や異動した際に、誰もフォローができないといったことが発生します。このようなリスクを回避するためには、情報の共有が必須です。
たとえば、日々運用していく中で、アカウントに加えた変化や調整内容を常に記録するようにしましょう。調整したあと、成果改善につながる数値的な変化があったのかを観測し、成功なのか失敗なのかを記録していきます。それがいわゆるノウハウというものになります。月に一度簡単でいいので、実施した検証内容をまとめ、社内で共有し理解することでノウハウが貯まり、企業の資産となります。
パートナーシップの活用
どうしても内製化が難しい業務については部分的に外部に委託しましょう。必要に応じて外部リソースを活用することで、効率的に運用できる場合もあります。例えばバナー制作やホームページの改修のみ、外部のデザイン会社に委託するなどして、メンバーの負荷を軽減します。
また、あるプロジェクトだけ代理店に運用を任せ、最新のマーケティングトレンドなどの情報をピックアップするなどすることで、インハウスと外部の双方のメリットを享受しつつ、柔軟で強固なマーケティング体制を築くことができます。
最新の情報をキャッチアップする
インハウスマーケティングを成功させるためには、常にアンテナをはり、マーケティングの最新トレンドに敏感である必要があります。新しい施策をキャッチアップして即座に実施・検証を進める事が重要です。定期的に業界のセミナーやイベントに参加したり、専門のマーケティングメディアを見に行きましょう。Google アラートという機能を使い、特定のキーワードに関する最新の情報をメールなどで受け取れるサービスも活用するのもおすすめです。
まとめ
インハウスマーケティングは、コストパフォーマンスや社内のナレッジの蓄積・運用の高速化など得られるメリットが非常に大きいです。一方で、課題もあります。マーケティングのスキルセットを備えた人材の確保は難しく、属人化のリスクや人材の流出、最新情報のピックアップが難しいなどのリスクがあります。そのため、インハウスマーケティングを導入するかどうかは、デメリットを受け入れ、それに対する準備をしっかりと行えるかどうかを判断基準として進められることを推奨します。
Masahiro Ozeki
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