自社のランディングページ(LP)の改善効果を最大限に引き出すために、外注業者やWEBコンサルなどに依存せず、LPOの施策案から分析までの実務全般を内製化するインハウスLPO(ランディングページ最適化)を進めている企業が近年増えつつあります。
自社内でLP制作や改修を行うことで、外注コストを節約しながら、社内にデータやノウハウを溜めていくことができるのが大きなメリットです。しかし、LPOを外注から自社で完結できる仕組みに移行するには、そう簡単ではありません。
実際にランディングページ(LP)を効果的に改善し、コンバージョン率を向上させ成約数をアップさせていく目的で内製化をしても、間違った方法で内製化してしまうと、インハウス化せずに外注していた方が、結果として何倍も改善できていたということにもなりかねません。
本記事では、インハウスLPOを成功させるための考え方と重要なポイントについて、5つの具体的なステップで解説します。これらのステップを順番に実践することができれば、間違いなくLPO施策について外部依存から脱却でき、さらに社内に知見も溜まり、効率的にLP改善を進めていくことができるようになります。
ステップ1: 自社LPの現状の課題を明確化する
自社のランディングページ(LP)を改善していくためには、まずは現在のLPの状況を正確に数値で把握することが重要です。そして、FV(ファーストビュー)での離脱が多い、問い合わせボタンのクリック率(CTR)が低いなど具体的な問題点や課題を明確にする必要があります。
問題点を特定できれば、必要な改善プランやA/Bテストプランなどを立案・実行し、効率的な成約率の最適化を進めることができます。
まずは、以下の順番を参考に、現在のLPパフォーマンスデータを把握して、気になる課題をピックアップしていきましょう。
LPの現状を「データ」で把握すべき理由
ランディングページの現在の状況を正確に評価するためには、各種の数値データを分析することが極めて重要です。サイト改善などの経験則がない状態で、「なんとなくここが悪そう」「ここのデザインが自分好みではない」と主観的に判断してしまうと間違った改善(改悪)になりかねません。
そのため、分析ツールのデータを活用しながら問題、改善点を特定(想定)するようにしましょう。そうすることで、経験則などの直感でもわからなかった問題箇所を明らかにすることができます。
実際に、LPOを内製で実施していく上で、課題を見つけるためにどのようなツールで分析を行い、どのような指標をチェックするのが良いのか参考データをまとめておきます。
LPの問題点を掘り起こすために効果的な2つのツール
LPにランディングする訪問ユーザーが実際にどのように行動しているかが可視化できるツールを活用することが必要です。そのために必要なツールが2つあります。
一つ目は、説明する必要がないほど普及しているユーザー行動やデータ分析で使われるユーザー分析ツール「GA4」(Googleアナリティクス)です。そして、もう一つが、「ヒートマップツール」です。
- Googleアナリティクス
- ヒートマップツール
ユーザーの訪問数、滞在時間、直帰率などを把握できるツールです。どの流入経路から訪問者が来ているかや、どのデバイスで閲覧しているかなど、詳細なデータを確認できます。
ヒートマップは、ユーザーがどの部分をクリックしているか、どの箇所でスクロールを止めているかを可視化します。これにより、ユーザーが注目しているポイントや、無視されているエリアを特定できます。
ヒートマップツールは国産のツールだけでも無料や有料含め10種類以上ありますが、基本的には完全無料で使えて訪問ユーザー数制限もないため、マイクロソフトの「Clarity」の活用を推奨しております。
※一言コメント:LPの申込みページなどでSPAタイプの遷移フォームを実装されている場合などは、有料のヒートマップツールを活用しないと、ユーザー行動のヒートマップデータが分析できないケースが多いです。
この2つの分析ツールを活用して次の指標などを確認することで、LPの問題点が簡単に特定できることもあります。また、A/Bテストツールを導入される場合
ツール選定のポイント
ツールを導入する際には、以下のポイントを基準に選びましょう:
- 操作の簡便さ
- 機能の充実度
- 運用コスト
専門知識がなくても直感的に使えるツールを選ぶ。
A/Bテストやデータ分析機能など、改善プロセスをサポートする機能が揃っていること。
コストパフォーマンスが高く、継続的に利用しやすい価格設定であること。
問題箇所を特定するためによく使う指標と数値データ
- コンバージョン率(CVR)
- 直帰率
- 滞在時間
- クリック率
最も重要な指標です。ランディングページに訪問したユーザーのうち、設定している目標(購入、申込み、問い合わせ、資料請求など)を達成した割合を示します。
設定ゴールのコンバージョン率が想定よりも低い場合は、LP全体やFVのキャッチコピー、訴求、デザイン、CTA周りに改善余地がある傾向があります。
訪問ユーザーがLPにランディングした後、他ページに遷移せずにページからいなくなってしまう割合が直帰率です。直帰率が高い場合、訪問ユーザーにとって欲しい必要な情報が掲載されていないと判断されてしまうことで直帰率は高くなります。
その他にもページのデザインや閲覧したコンテンツ内容に興味関心がない可能性もあります。
ランディングページに滞在する訪問ユーザーの平均時間です。滞在時間が長いほど、LPの内容へ興味関心がある傾向があるため、イベントなどで目標設定したコンバージョンにつながりやすくなる可能性が高くなります。
また、「滞在時間」を高めるLPO対策を実施することで、「直帰率」も大きく改善する場合もあります。
LPの申込みなどに繋がるボタンやリンクのクリック割合をチェックします。例えば、LP最後の申込みボタンのクリック率が低いという場合は、LPのその位置までにユーザーの多くが離脱してしまっている可能性や、CTAのテキスト(マイクロコピーなど)やデザインなどを改善する必要があるかもしれません。
LPの問題点のリストアップと改修の優先順位の決め方
GA4やヒートマップデータの分析をして問題箇所を洗い出しますが、その際に、一度に全ての問題点を改善しようとするのはNGです。そうしてしまうと、どの改修内容が施策前後でどの程度改善(悪化)したのかというデータが取れなくなってしまうためです。
なので、同時に複数のLP改修を実施することは最終的には最適化の遠回りになってしまうため、改善ポイントのリストアップと同時に改善インパクトが高そうな改修案について優先順位を考える必要があります。
ここでは例としてデータ分析により3つの問題点を見つけ出し、どのような優先順位でLPO対策を実施していくべきなのかについてLPOの施策例と考え方を共有します。
改善箇所のリストアップ例
GA4及びヒートマップ分析の結果、以下の3つの問題点がわかりました。
①直帰率が高い(滞在時間が短い):ヒートマップ分析により、LPを開いた直後に写し出されるFV(ファーストビュー)の離脱が特に多いことがわかった。
■改善点の考え方:FVを見た瞬間にすぐに直帰しているユーザーが多いためFVのコピーや訴求がユーザーの大半のニーズとマッチしていない可能性が高い
②コンバージョン率が低い:GA4のイベントCV数より「申込み完了」の成約率が低いことがわかり、さらにヒートマップ分析により、LP後半のお客様の声(テスティ)のパートで特に離脱が多くなっていることがわかった。
■改善点の考え方→LP全体や一部のコンテンツ、クロージング、CTAなど多岐に渡る問題点に影響するため複数の問題が原因である可能性が高い
③申込みボタンのクリック率が低い:GA4やヒートマップ分析により、LP最後までスクロールしているユーザーの割合に対して、「申込みボタンのクリック率が低い」ことがわかった。
■改善点の考え方→クロージングコンテンツ及び申込み導線となる誘導文やCTAが原因である可能性が高い。
施策優先順位の考え方
各種分析結果で浮き彫りになった改善箇所について、実施にどのような順番で改善していくかを決めていく必要があります。基本的には、以下の優先度の高い順に実施していくことで、最適化を効率的に進めていくことができます。
- 優先度(高):改善インパクトが大きく、コンテンツ改修の実施がテキストのみなど大変ではないもの
- 優先度(中):改善のインパクトがある程度あり、リソース的にも時間がそれほどかからないもの
- 優先度(低):改善のインパクトが小さく、時間的な工数や改修コストなどが多く発生するもの
各問題点の影響度(改善インパクト)から実践順を検討
各問題箇所が全体のコンバージョンに与える影響度をそれぞれ評価します。
例えば、今回の例で考えると、コンバージョン率は一番重要なので、優先度としては当然高いです。しかしながら、様々な箇所が全体の成約率に影響するため、実践的には、FVの改善に真っ先に取り組むべきです。というのも、下の方のパートでいくら問題点を解決でき、元のLPの数倍も良いコンテンツ改修に成功したところで、そこまでスクロールされる前に、最初のパートで多くのユーザーが離脱されてしまえば、いくら改善しても元も子もないので、FVの離脱改善を優先した方が良いわけです。
ステップ2: インハウスLPOの社内体制構築とLPOツールの導入
LPOの内製化には、LPOに必要なスキルとその担当者を決める社内体制を決定していく必要があります。
ステップ1の分析で、例えどれだけ効果的なLPOの改修プランを設計できても、それを実行、実現できなければ無意味な計画になってしまいます。このステップ2では、LPO担当者に必要なスキルセットやサイト改善を進める上で必要なおすすめのLPOツールについて詳しく解説します。
インハウスLPOに必要なすスキルセット
ランディングページの制作や既存LPの改善を進めるためには、社内に最低限の各種スキルを持つ担当者を準備することが必要になります。
ただし、各スキル毎に最低1名のスペシャリストがいないと改善が進まないというわけではありません。
専門的な経験や知識がなくても、一人で複数の役割を担当したり、専門家がいない場合は、複数の担当者をつけて作業を分担したりすることで、少人数のLPOチーム構成でも効率的にLP改善を進めることができます。また、社内でLPOのインハウス化を進める上で以下の3つのスキルが、特に重要なポイントになります。
WEBマーケティングスキル
ターゲットユーザーの設定や分析、LPに使用する訴求やコンテンツ改修の立案スキルが求められます。中でも、特に「ペルソナ設定」や最終ゴールだけでなく、途中過程のマイクロコンバージョン設定といった複数の「コンバージョン目標」を設定するなどのスキルが求められます。
コピーライティングスキル
LP内に掲載するテキスト部分(画像内テキストを含む)を作成、修正するスキルです。見込み客となるターゲットユーザーの心を動かし、行動を促すために必要な魅力的なテキスト(メッセージ)やセールスの流れを構築、また修正できるスキルが求められます。
WEBデザインスキル
LPの改修に必要なキービジュアルなどのデザインを修正できる能力です。既存のLPとトンマナを合わせた上で、レイアウトやブランドイメージを反映し、さらに全く新しいデザインを作るなど柔軟に対応できるデザイン能力がポイントになります。特に、FVなどはそのLPの評価が決まるほど大事な要素であるため、FVで視覚的な訴求力を高めるデザインスキルは最も重要な要素になります。
少人数チームでも実施可能なLPO運用の役割分担例
LPO施策に関わる各メンバーの役割を明確にして作業を分担することで、効率的にLP改修を進めることができ、小規模なチーム(少人数)でも十分なコンバージョン改善成果を出すことも可能です。
役割分担の一例として、LPO担当者3名でLPO業務を遂行していくための作業分担が以下になります。
- マーケティング担当者:LP分析、LP改善戦略立案
- デザイナー
- エンジニア(コーダー)
(A/Bテスト設計)、LPO施策の検証(結果分析)、ディレクション(社内進捗管理)
LP改修に伴うデザイン修正、新規コンテンツ画像制作
LP改修に関連するコーディング、A/Bテスト設定
LPOツールの導入
インハウスLPOに欠かせないWEBツールがA/Bテストツールです。これは、フォーム関連のコンバージョン率の最適化(EFO)を実施する場合にも使われ、EFOのテストを行う場合は、専用のEFOツールを使った方が良いケースもあります。
LPOで使用するA/Bテストツールの選び方としては、大きく分けると、国産と外国産のツールにわけられます。国内のツールの特徴としては、基本的には有料プランの値段が高い傾向にあります。その分、日本語でのサポートなどを受けられるのが大きなメリットと言えます。
そして、国産で無料のA/Bテストであれば、個人的には「Optimize Next」が一番おすすめのツールになります。何より、2023年に使えなくなってしまい、それまで無料提供されていたGoogleの無料A/Bテストツール「Google Optimize」 の機能や操作性がほぼ一緒という点が推奨理由になります。
そのため、「Google Optimize」を使ったことがある方であれば、ほぼ何も新しいことを覚える必要がなく直感的に同じようにテスト設定できてしまいます。有料版もありますが、月額費用も安く、テストのアクセス制限もないため、管理者が一人であればオプネクの無料版でほぼ事足ります。
一方、外国産のA/Bテストツールは、非常にたくさんあり、その中でもメジャーなツールを以下にまとめておきます。
- Optimizely
- VWO(Visual Website Optimizer)
- Adobe Target
広く世界中で活用され、何か操作でわからないことがあれば、ネットで英語検索すれば色々な情報が出てくるのが大きなメリットです。有料版だと比較的高度なA/Bテストの機能やパーソナライゼーションの機能などが使えます。※無料版のデメリット:上記のいずれのA/Bテストツールの無料版は、同時にテストを実行できる数やテストのトラフィック量(アクセス数)に制限があります。
インドから世界に受け入れられた人気のA/Bテストツールです。以前Googleで無料提供されていたGoogle Optimizeと同様に直感的なユーザーインターフェースを持ち、さらに、有料版であれば、ヒートマップ、セッションレコーディング、フォーム分析などの機能も使うことができます。
※無料版のデメリット:上記のいずれのA/Bテストツールの無料版は、同時にテストを実行できる数やテストのトラフィック量(アクセス数)に制限があります。
有料のAdobe Experience Cloudの機能の一部として提供されている高機能なA/Bテストツールで、パーソナライゼーションやマルチバリアントテスト、マルチアームバンディットテストなどの機能が優秀で多様なテスト方法があるのが特徴です。※無料版はありませんが、無料体験を使うことで全機能が無料で7日間使用できます。
これらのどのABテストツールを使うべきなのかは、会社の規模感などによって異なりますが、中規模から大規模な企業でツールにかけられる予算があり、A/Bテストに詳しいデータサイエンティストが社内にいるのであれば、「Adobe Target」を使うことで、様々なテスト検証が効率的に進めることができます。一方で、ABテストのツール費用には、できる限り予算を使いたくないと考える場合は、無料プランのある「Optimizely」「VWO」がおすすめです。その中で、Optimizelyの方は、テストにより高度な機能が必要な中級以上のレベルの担当者が使うのに適しており、VWOの方は、比較的初心者レベルの担当者でも操作が簡単で使いやすい設計になっているため、同じようなテストを繰り返しスピーディにPDCAを進めていきたいといった場合に向いています。
特徴 | Optimizely | VWO |
---|---|---|
テスト技術 | 高度なウェブサイトテスト技術 | 包括的なユーザーモニタリング |
使いやすさ | 中級から上級ユーザー向け | 初心者や基本的な使用に適している |
統合とデータ活用 | 深い統合とオフラインデータの活用 | マーケティングツールとのシームレスな統合 |
トラフィック配分 | 自動トラフィック配分機能 | 高速な実験サイクル |
ステップ3: LP改善案の立案
ランディングページ(LP)を改修し成約率の改善を効率的に進めるためには、まずは具体的な戦略を立てて、明確な目標(ゴール)を設定することが必要です。何をどの程度を目標として目指すのかをはっきりさせることで、改善施策や施策に優先順位をつけ、無駄なテストなどを削減でき効率的にLP最適化が実現できます。
本ステップでは、無理のない目標設定(ゴール設定)の方法から、LPにランディングするターゲットユーザー像の理解、具体的なLPの改修例を詳細に解説します。
ゴール設定の重要性
LPOに取り組む際には、最初に目標とするゴール設定の目安を明確にしておきましょう。どの程度の改善結果を目指すかによってリスクの取り方も変わってくるためです。また、高い目標にも関わらず、CVRが1.1~1.2倍程度しか変わらない施策をいくら実施しても、2倍などのCVR改善効果は見込めないため、その努力は無駄になってしまいます。
そのため、以下のようなLP改修の目標設定をすることで、具体的な改善点や優先施策がわかるようになってきます。
よくある目標設定(ゴール設定)の例
- CVR(コンバージョン率)を2倍にする
- リード獲得率を2倍にする
- エンゲージメントの強化
LPにランディングしたユーザーが目標設定イベント(購入や申込み、問い合わせ、資料請求など)に達成する割合を2倍に増やすことを目指します。これを中心的かつ優先的な最終ゴールに設定します。
最終的な目標到達に行くという①のCVルート以外に、別の目標設定として、見込み客情報を獲得するためのリスト獲得(リード獲得)を目標とします。特にBtoBビジネスや、即購入や申込みに繋がらないようなリードタイムが長い商材に有効です。
ブランドや商材に対するユーザーの興味関心や信頼感を上げることを目標にします。例えば、滞在時間を2倍に増やすなどです。具体的には、情報提供の質を高めるために他には掲載されていない一次情報やコンテンツをわかりやすくしたり、魅力的に見えるような施策が含まれます。また、この施策はCVR改善に繋がるだけでなく、LPのSEO対策にも繋がるケースもあります。
このように具体的な目標を設定することで、どこを最優先で改修すべきなのかがわかります。コンバージョン率を2倍に向上させたいという場合は、FVやCTA付近、フォームの最適化が非常に影響度が高い重要なパートになるため、繰り返ししつこく改善テストを実施していく必要がありkます。また、新規リードの獲得を2倍にしたい場合、ユーザーに刺さる訴求やオファー内容、コピー、デザインなどを中心に改善テストをしていく必要があります。
LPO特有のペルソナ設定とLP構成
続いてランディングページのターゲットユーザー像(ペルソナ)を設定し、その人の感情などの心理状態を理解する必要があります。このペルソナ設定が適当すぎると、ユーザーのニーズに全く刺さらない訴求になったりしてコンバージョン率が高いLPを作ることはできません。
また、LPOに特有のペルソナ設定は、一般的な属性(年齢、性別、職業)も当然大事ですが、SEO施策のペルソナ同様に「どのような悩み、問題を抱えているか?」「どんなことを解決したいのか?」について考えることも極めて重要です。そのため、年齢、性別、職業、居住地などのターゲットユーザー情報を個人単位で設定し、また、どのような検索意図で特定キーワードを検索するユーザーなのか?について考えることが重要です。
LP設計のポイント
設定したLPOペルソナを基に、以下のような考え方でLP改修を検討しましょう。
- 問題箇所や悩みを直接的に訴求し、その解決方法を提案する構成
- LPに訪問したユーザーが「そう!そう!」と共感しやすい構成
- 自然なペルソナ目線とストーリー性のある導線で考えたLP構成
例えば、LP構成の公式の一つである、AIDMAの法則を使ったLPフレームワークでは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5つの順番になっています。
このような流れのLP構成を作ることで、離脱されにくいLPが構築できます。
コンバージョン率に影響が大きい「Message」「Design」「CTA(Call to Action)』の最適化
ランディングページからのコンバージョンを増やすために重要なポイントがメッセージ、デザイン、CTAの3つの要素を徹底的にテストを繰り返し最適化を行っていくことです。
①Message:フックとなる訴求性の高いコピーやシンプルで魅力的なコピー
・ターゲットユーザーがLPにランディングした瞬間に、自分毎に感じられる訴求性の高いコピーを検討する。 例)「35歳の方専用の〜」「左利きで右肩に違和感を感じている方の〜」
・LPのペルソナニーズにマッチした直接性の高いメッセージのコピーを検討する。例)「13年間業界No.1の〜」「1年以上◯◯に悩んでいる方へ」
②Design:目に飛び込むインパクトや分かりやすいデザイン
・ユーザーが頭を使わず直感的に理解ができるデザイン性
・ブランドイメージやペルソナに合わせたテキストカラーやフォントの種類
・なるべくシンプルでわかりやすいコンテンツデザインにして、強調したいコンテンツ(CTAボタンやフックとなるメッセージ)はメリハリをつけて目立たせる。
③CTA(Call to Action):ボタンやボタン付近のマイクロコピーやクロージングメッセージなどを含む
・CTAボタンカラー(色)はオレンジ、黄緑、黄色系が無難
・CTAボタンのコピーは、具体的で行動を促す形にする 例)「今すぐ無料で試してみる」「今すぐダウンロードする」「お問い合わせはこちらをクリック」
・CTA付近にマイクロコピーを設置する場合は配置を工夫する。多少長い情報でも補足情報を認知させ、行動力(申込力)を高められる。
LP改修版のプロトタイプを作成しチームに共有・検証する
ランディングページの改修案が出来上がったら、本番環境にそのまま反映させずに、まずは新LPのプロトタイプを作成した方が良いです。社内の関係者などにLPを見てもらい、気になる点やわかりにくい部分を検証することで、さらに完成度の高いLP改修を進めることができます。
ステップ4: A/Bテストで最適化を進める
ランディングページ(LP)を改善する際には、一度で完璧なページを作るのは難しいものです。そこで重要なのが、A/Bテストを活用してデータに基づき最適化を進めることです。このステップでは、A/Bテストの基本的な手法や進め方、データの分析方法、継続的な最適化の重要性について詳しく解説します。
A/Bテストの一般的な方法とテストの進め方
LPにおけるA/Bテストは、複数の異なるパターンのLPをテスト設定し、どちらのLPが設定した目標(ゴール)にがより良い結果(スコア)になるかを比較検討する方法です。特定箇所のデザインや訴求メッセージ、CTA、フォームなど様々なLPのコンバージョン率に影響する要素を改善したい場合に効果的です。
A/Bテストは変える要素を1つに絞ることがおすすめ
A/Bテストを実施する際に、色々な要素を試したいからといって、テストパターンの複数の要素を変更してしまうと、結果として、どの要素がどの程度結果に影響を与えたのかが不明な状態になってしまいます。
上級テクニックとして、複数の要素を同時にA/Bテストする「多変量テスト」がありますが、有意差のある結果が出るまでに、テストのサンプル数が非常に多く必要になる可能性があるので、テスト結果がわかる(有意差が着く)までに半年〜1年などテスト継続する時間が必要になることも多いので注意が必要です。
そのため、A/Bテストは1回のテストで1要素に絞って検証することが基本になります。
※ABテストの検証例
- ヘッドコピー(シンプルなパターン vs 色々な情報を入れたパターン)
- FVのCTAボタンの数(申し込みのみ vs 資料請求+申し込み)
- ボタンの色(黄色 vs 緑色)
- CTAのテキスト(「今すぐ登録する」 vs 「まずは無料で試してみる」)
また、A/Bテストの指標となる目標設定(ゴール設定)には、CVR(コンバージョン率)が一般的ですが、それ以外にも以下のような指標を利用することがあります。
- クリック率
- 離脱率
- エンゲージメント
特に、エンゲージメントはGA4でデフォルトで備わっている指標でもあり、ここ最近のSEO対策でも重要な要素の1つになっていますが、エンゲージメントは、何かしらの行動(ページのどこかのリンクをクリックした率など)を示したユーザーというスコアになるので、「離脱率」の逆数的な形でユーザーの「行動訴求力」を計ることができます。
例えば、FVで物凄い反応が取れるキャッチーコピーが作れたとしたら、CVRだけでなく、滞在時間が伸び、サイト内リンクなど様々な離脱以外の行動(エンゲージメント)に繋がりやすいと考えられます。
これらの目標設定(ゴール設定)を活用し、テスト比較することで、どのパターンのLPがより多くのユーザーに目標への行動を促進できたかを定量的に示すことができます。
効果測定期間の目安とデータの分析方法
A/Bテストの効果を正確に測定するためには、一定の期間データを収集する必要があります。期間が短すぎると結果が偏る可能性があり、十分なデータが得られません。
効果測定期間の目安
通常、A/Bテストの実施期間は1〜2週間程度が目安です。この期間中に十分なサンプル数を集め、信頼性の高い結果を得ることを目指します。以下のポイントも考慮してください:
- サンプル数が少ない場合は、期間を延長する。
- 季節や曜日による影響がないかを確認する。
データ分析の進め方
- 集計と比較収集したデータを集計し、各バージョンの指標を比較します。
- 統計的有意性の確認統計的に有意な差があるかどうかを確認します。これにより、結果が偶然ではなく、実際に効果があったと判断できます。
- 次の改善ポイントを決定A/Bテストの結果をもとに、次に改善すべき要素を特定します。
テスト結果の判断テクニック
ABテストツールでテストを進め、テストデータから算出されているテストの確度を参考に、どのパターンが最も反応が良いのかを判断します。複数の指標を目標設定(CV設定)している場合は、テストに最も影響がある部分を優先して判断する必要があります。
例えば、LP→フォーム→申込み完了(サンクスページ)のCV構造の場合、LPの一部を修正するA/Bテストを実施し、イベントなどCVの評価を「フォームへの到達」や「サンクスページ到達」など複数のゴール設定をしているかもしれません。
そして、このLPのA/Bテスト結果が、「フォームへの到達」CVはテストパターンが勝利し、「サンクスページ到達」CVは、オリジナルが勝利したとします。
この場合、フォームへの遷移から申込み完了までの間にあるフォームの内容は全く同じであるため、テストの影響は前者よりも小さいと考えます。(全く影響しないわけではなく若干の影響はあります)
そのため、今回のケースでは、前者の「フォームへの到達」CVの勝者であるテストパターンを本番環境に採用した方が良いという判断になります。
継続的な再検証の重要性
LPのA/Bテストは、一度勝ちパターンが分かったからといって終わりではありません。常にマーケットやユーザーの悩みやニーズは変化するため、LPの最適化は定期的に実施していく必要があります。
LPテストを繰り返すべきタイミング
A/Bテストは、シーズン(季節)ごとに実施することが1つの方法です。冬場に反応が良かったLPが夏場にはコンバージョン率が悪くなるといったケースも美容商品などのケースではよくあります。
なので、ユーザーの心理状態や行動力が変わるタイミングでLPテストを実行するのが理想です。また、既存の訴求内容をアップデートするだけで反応が上がることもあるので、満足するCVRになっても、定期的にテストを繰り返しましょう。
例えば、不動産や賃貸物件サイトのLPの場合は、繁忙期は、直接的な内見予約や電話コンバージョンをメインに設置し、閑散期は、資料請求のリード獲得や問い合わせをメインにしたCTAに変更するなども有効なLPO施策かもしれません。
このような新しい切り口を見つけるためには、同業のライバルのLPをチェックするよりも、同じような顧客ニーズやトレンドがある他業界のLPをチェックすることがポイントです。
切り口やリード獲得などのヒントを得られることが多いので、ぜひ様々な他社のLPもチェックして、上手に手法をパクって、小規模なA/Bテストを実施し反応がどうなるかをまずはテストしてみましょう。
テストを繰り返し小さな改善を積み重ねる
LP改善による最適化は、一回の結果では20%程度の小さな改善であっても、同じテスト箇所や別のテスト箇所でも小さな改善を何度も繰り返すことで、最終的に最初よりも何倍もコンバージョン率が上がることが普通に起こります。
例えば、5回のA/Bテストで以下のような成功、失敗の結果のテストがあったとします。
5回のA/Bテスト結果の例
テスト名 | 内容 | 勝利パターン | 改善率 |
---|---|---|---|
テストA | FVのコピーテスト | パターン1 | 75% |
テストB | FVのコピーテスト2回目 | パターン2 | 20% |
テストC | CTAのボタンテスト | オリジナルが勝利(テスト失敗) | – |
テストD | CTAのボタンテスト2回目 | パターン2 | 35% |
テストE | CTAのマイクロコピーのテスト | パターン1 | 25% |
さて、この5回のテストで勝ちパターンを全てLPに反映させると、初期のLPからどれくらいコンバージョン率が改善しているでしょうか?
答えは、、、
なんと約3.5倍(350%)にもなるわけです。
このLPが広告運用で集客しているとしたら、CPAが1/3.5に大幅改善するというわけです。元のLPの広告費が70万円で10人成約していたという状況だったらどうでしょうか?
LPO対策で改善したLPの方で運用すれば、10人成約に必要な広告コストは、これまでの70万円から20万円(-50万円)に大きく減少するということです。
大きな改善効果は小さい改善の積み重ねで実現
このように、小さいLP改善でも繰り返し少しずつの改善効果が積もり積もって、結果的に大きなCVRの改善効果が実現できます。
また、繰り返しLPのABテストを実施していくことで、たくさんのLP改善の成功体験が積み上がってきます。その結果、様々なLPへの応用方法や考え方などの知見が担当者や社内レベルにまで蓄積し、次のステップで詳しく説明する本当の意味でのLPO対策の内製化が実現できます。
1回のABテストで劇的な改善効果が出ない場合や、テストパターンが全て負けてしまったという場合でも落ち込まず、継続してLPの改善テストを実施し続けることが重要です。
ステップ5: 社内にLPOのノウハウを蓄積し持続可能な運用方法を構築
LPOを全て内製化で成功させるには、優秀なマーケターやコピーライターがいなくても問題はありません。どの担当者であってもABテスト方法や手順などに間違いが起こらない仕組みを整備することが成功の鍵になります。
もちろん、ABテストの経験豊富な優秀な担当者がいれば効率は良くはなりますが、しっかりと社内でテスト方法やノウハウの蓄積があれば、ABテストの経験のない一般的な担当者でも、一定の改善効果が出るまでに少し時間がかかるだけあって、中長期的に見れば、それほど大きな影響はありません。
新人LPO担当者(Tさん)はなぜ10年以上のベテランに完勝したのか?
とあるABテストに関する面白いお話があります。
ある会社でLPO施策の担当者が、10年以上のベテランマーケターから新人の担当者(Tさん)に引き継ぎが行われました。Tさんは経済学部の大学を卒業し入社約半年でLPO担当者になってしまいました。
前任者のベテランマーケターがTさんにLPOのノウハウを色々とレクチャーするために、LPの改善案を出させ、実際にABテストを一緒に行いました。テスト内容は、FVのデザインとキャッチコピーの修正でした。
そのテストの結果、これまで前任者が20回以上ABテストをしてきましたが、引き継ぎの初回で、なんと過去一の記録的なCVR改善が達成できてしまったのです。それを知った前任者のベテランマーケターは、みるみる顔が赤く…
さて、なぜこのようにLPO初心者の人が驚くべき結果を残せたのでしょうか?
そのヒントはLPを読む時の当事者意識が高かったからです。実は新人担当者は、LPのペルソナに極めて近い人物像だったので、LPを見るとすぐに「自分にはこの訴求は刺さらないし、ページを閉じたくなる」と感じました。
そこで、まずはページ(LP)を開いた瞬間に「自分ごと」であることが伝わるように、自らの悩みに対してこうすれば自分なら気になるという直球のコピーのテストパターンにしたのです。
このようにいくらマーケティングの知識や経験などの実力があっても、素人に負けることもあるのがABテストの面白いポイントでもあります。なので、仮説検証のテストを行い、定量化して判断するといった社内データの蓄積が何よりも大事になります。
ABテストのやりっぱなしはNG
ABテストを徹底的にやり、スピーディにPDCAを回して、効率よくテストをしているつもりでも、意外とテスト結果をまとめたり、今後別のテストに使えるような考察までしていないケースもよくあり、数年後に、別の切り口で同じようなテストを無駄にしてしまったなんてこともよく聞きます。
テスト設計前に昔のデータさえ確認していれば、絶対にそのようなテスト設計はしていなかったはずですが、担当者が変わり過去のテストデータが昔のデータに埋もれて把握できていなかったため、このような無駄なテストで大きく時間を損する可能性があります。
そのため、過去のテスト内容や結果をわかりやすくまとめておくことは、LP改善のインハウス化には極めて重要なポイントになります。
なお、弊社でABテストツールとして推奨している無料で使える「Optimize Next」では、「仮説検証」をまとめる機能があるので、過去にテストしたポイント毎の検証結果やテスト未実施の仮説なども把握することができるので、上手に活用してABテストのプランニングやテスト設計をしていきましょう。
成功事例を共有してチームを強化
ランディングページ改善の取り組みを成功させるたびに、その事例をチーム全体で共有することが重要です。共有を通じて、成功要因や改善プロセスを全員が理解することで、次回以降の取り組みに活かすことができます。
成功事例共有の進め方
- 定期的なミーティングを開催月に1回などの頻度で、LP改善の進捗や成功事例を報告する場を設けます。この場で、どのような改善が功を奏したのかを具体的に説明します。
- 成果の見える化コンバージョン率やクリック率の向上など、成功の数値的な成果を資料化します。グラフや図を用いることで、誰でも分かりやすく共有できます。
- 改善プロセスの共有成功に至った具体的なプロセスを明確に伝えます。例えば、ペルソナ設定の工夫やCTAの変更ポイントなど、再現可能なノウハウをチーム全体で共有します。
長期的な効果を生むインハウス運用の文化づくり
インハウスLPOの運用を持続的に成功し続ける仕組みを作るには、社内メンバー各自のスキルアップが欠かせません。その中でも、特に、新入社員などの若手社員やスタッフを対象としたインハウス化のための教育プログラムの実施が必要です。
インハウスLPOを一時的な施策やプロジェクトとして終了させてしまうのはあまりにも勿体なく、できれば企業文化としてノウハウなどを定着させていくことが重要です。
<社内のLPO改善のナレッジ共有方法とポイント>
- 定期的なLPO施策の報告やミーティング機会を設ける
- 学びを深めるためのディスカッションやフィードバックの場を提供
- 他の成功事例を積極的に共有する
LPの改善施策の進捗状況や結果について共有する機会を構築する。このような情報共有を習慣化することで、自然と改善活動がチーム内のノウハウへと定着していきます。
外部のセミナーやWEBサイト、オンライン講座などへ積極的に参加し価値の高い情報を取り込んでいくことで、社員が自発的に意見交換したり、新しいスキルや知識を習得できる機会を生み出します。
成果を上げた施策内容や担当者を積極的に賞賛し、社内で意識を高め合います。これにより、他のメンバーも積極的にLPOの改善活動に参加しようという意識が自発的に高まります。
まとめ
インハウスLPOを社内に取り入れ自立化することができれば、高額な固定費がかかるWEBコンサルタントやLP改善サービスなどの外部業者に依存することなく、迅速にランディングページの成約率などを改善できるPDCAの体制を築くことができます。
しかし、そのLPO成果を長期的に持続させたいという場合は、担当者一人に任せっきりではなく、社内にノウハウやナリッジを蓄積していくことが極めて重要です。
今回長々と説明させていただいた「LPOの5つのステップ」を順に理解して実践していくことで、インハウスLPOの成功率が徐々に高まり、ベースの成功率も格段に底上げされると思います。
また、一度このLPO施策の社内体制が整えば、別事業を新しく始めたりする際にも、すぐに効率的にLPやサイトを改善できるスキームを作り上げることができるようになるでしょう。
Takenori Kawabata
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