インハウス広告運用は、企業のマーケティング戦略に直接関与する重要な役割であり、迅速かつ柔軟な対応が可能です。一方で、高度なスキルや経験が求められます。人材的な市場価値も非常に高くなり、企業側も手放したくない人材として確保するため、待遇面でも良くなる傾向にあります。この記事では、求人応募時に必要なスキルや経験、求められる人物像を詳しく解説します。
必要スキル①広告運用の基本的スキル
まず初めに、広告運用の基本的なスキルが必要です。これらのスキルはそもそもインハウス運用者となるための大前提とも言えるものです。言い方を変えると、このスキルがないとインハウス広告運用者にはなれないと言っても過言ではありません。
アカウント構築や入稿作業のオペレーションスキル
広告管理画面を正確に設定し、効果的なキャンペーンを実施するための基本操作が求められます。具体的には、以下のような作業が含まれます。
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- キャンペーンや広告グループの設定
目的に応じたキャンペーン構造でアカウントを設計します。目的や訴求・ターゲットなどでキャンペーンを分けたり、あえて最適化を促すためにまとめるなど、効果に合わせて構成を変えたりなど、経験則での判断も必要となります。
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- キーワード選定やターゲティング方法
広告配信において、どのようなキーワードやターゲティングで配信するかで成果が大きく変わります。リスティングの場合、適切なキーワードを選び、ディスプレイ広告であれば、カスタムオーディエンスや興味関心、タグで収集したユーザー情報を基にしたターゲティングなど、効果的なものを選定して配信する必要があるため、それらの設定方法やどのような手法があるのかを理解しておく必要があります。
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- 広告文やクリエイティブの作成・入稿
ターゲットユーザーに響く広告を作成します。魅力的なキャッチコピーやデザインを考案し、クリックやコンバージョンを促進します。また、一つ作っただけで効果が出ると限らないため、デザイン、コピーテキストなどを変化させ、テストするといった一連の流れなども把握しておく必要があります。
各媒体の特徴理解
Google AdsやYahoo!広告、Meta広告、LINE広告など、異なる広告媒体の特性を把握し、それぞれに最適な戦略を立てられる能力が求められます。
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- 媒体ごとのユーザー属性の理解
各媒体のユーザー層や利用状況を把握します。例えば、Tiktokは若年層が多く、LinkedInはビジネス層に強いなど、媒体ごとの特徴を理解できているかが重要となります。
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- 広告フォーマットの違い
テキスト広告、ディスプレイ広告、動画広告など、各フォーマットの特徴をとは何かを理解する事や、それぞれの仕様についても把握しておく必要があります。特にクリッカブルエリアやCTAの仕様などを把握しておく事でクリエイティブ戦略の策定も可能となります。
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- 機能やツールの活用
各プラットフォームが提供する分析ツールや最適化機能を効果的に利用します。例えば、顧客データを活用したカスタムオーディエンス配信機能や、CV数を最大化させる入札方式など、特性を理解する事が必要です。
必要スキル②データ分析能力
広告運用では、データに基づく、論理的な意思決定が不可欠です。数字を正確に読み解き、どこがボトルネックになっているかなどを解析、改善策を講じる能力が求められます。
各指標の相関性の理解
CPA(顧客獲得単価)やROAS(広告費用対効果)を最適化するために、どの数値をコントロールすべきかを理解し、適切な施策を実行できる能力が求められます。
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- 重要指標の理解と設定
目標とするKPIを達成するための数値管理を行います。例えば、CV数をKPIとする場合、コンバージョン率(CVR)などを定期的にモニタリングします。
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- データの可視化と報告
スプレッドシートやBIツールを用いてデータを整理し、チーム内で共有します。Googleなどは、Looker Studioと連携しているため、分析したい軸や出力したいデータをシームレスに可視化することが可能です。
データの分析と効果測定
過去の広告データを分析し、施策の効果を測定することで、今後の戦略に活かすことができます。
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- A/Bテストの実施
広告文やクリエイティブの異なるバージョンを比較し、最適なものを選定します。これにより、ユーザーの反応をデータで把握し、効果的な広告を展開できます。
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- ユーザー行動の分析
サイト内でのユーザーの動きを追跡し、改善点を見つけ出します。ヒートマップツールなどを活用して、ユーザーがどの部分に興味を持っているかを分析します。
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- データに基づく改善提案
分析結果をもとに、新たな施策や戦略を立案します。データドリブンなアプローチで、広告効果を継続的に向上させます。
必要スキル③クリエイティブディレクション能力
広告の効果を最大化するためには、魅力的なクリエイティブを作成するためのディレクションスキルがああることも重要です。
広告文やコピーの作成スキル
効果的な広告文やコピーを作成できる能力が求められます。
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- コピーライティングの技術
短い文字数でターゲットに響くメッセージを作成します。リスティングなどは半角30文字の見出しという上限が決まっています。限られた文字数で”伝わる””響く”広告分を作る能力が必要となります。
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- バナー作成のための方針策定
PhotoshopやIllustratorを使って、自らデザインを制作できるのがベストです。しかし、筆者としては、バナーに乗せるべきコピーやどういうデザインにすべきかをディレクションできる能力の方が重要と考えております。昨今AIによる自動生成技術も進歩しており、canvaなどを使用すればデザイナーでなくてもそれなりのクリエイティブを作る事が可能です。そのため、デザインができる事はそこまで重要ではなく、何をどのように伝えるべきかを考えられる能力の方が重要だと考えます。
ユーザーを引き付けるデザインセンス
クリック率やコンバージョン率を向上させるために、ユーザーの興味を引くクリエイティブを制作するスキルが重要です。
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- 色彩心理の理解
色の持つイメージや心理的効果を考慮してデザインします。例えば、赤は緊急性や情熱を、青は信頼感を表現します。
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- 視線誘導のテクニック
ユーザーの視線を効果的に誘導し、重要な情報を確実に伝えます。レイアウトやフォントサイズ、画像配置などを工夫します。
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- 最新のデザイントレンドの把握
常に最新のデザイン手法やトレンドを学び、クリエイティブに反映します。これにより、ユーザーに新鮮な印象を与え、興味を引き付けます。
必要スキル④プロジェクトマネジメント能力
インハウス広告運用は、運用する媒体が増えたり、対応領域が広がってくると、単独の作業ではなく、チームで進めていく必要が出てきます。複数のプロジェクトを効率的に進めるための管理能力が求められます。
スケジュール管理とチーム調整
広告キャンペーンのスケジュールを管理し、チーム内外との円滑なコミュニケーションを図る能力が必要です。
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- プロジェクトの進行管理
タスクの優先順位を設定し、期限内に完了するように調整します。ガントチャートやタスク管理ツールを活用して進捗を把握し、必要なリソースをプロジェクト毎に当てこみます。
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- コミュニケーションツールの活用
SlackやBacklogなどを使って情報共有を効率化します。リアルタイムでの情報交換の他、運用履歴の共有などを行いログを残すのにも役立てられます。
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- ミーティングのファシリテーション
定期的なミーティングを主導し、課題解決に向けたディスカッションを促進します。各担当から出てきた課題などを洗い出し、全体の方向性などを検討していきます。
KPIの設計と予算戦略立案
KPIを適切に設定し、施策の予算を効果的に配分する戦略的思考が求められます。
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- 目標設定と達成プランの策定
ビジネス目標に基づいた具体的なターゲットを設定し、その達成に向けた計画を策定します。例えば、ゲームアプリのアプリ内課金を獲得するために、その前段階のインストール数をKPIとして設定します。インストールから課金に至る転換率を逆算し、CPIがどの程度であれば広告を配信しても問題ないのかを算出します。
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- 予算管理
広告費の最適化を図り、最大限の効果を得るための予算配分を実施します。コストパフォーマンスを常にモニタリングし、必要に応じて媒体間での調整や、デジタル領域全体での効果が不十分な場合にはオフライン施策に予算をシフトするなどの判断が求められます。
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- リスクマネジメント
潜在的なリスクを見越し、あらかじめ対策を講じます。市場の動向や競合の状況を把握し、柔軟に戦略を調整できる体制を整えます。
必要スキル⑤マーケティング戦略の理解
インハウス広告運用では、自社の事業内容や市場の変化を的確に把握し、ビジネス目標に合致した効果的な広告戦略を計画し実行するスキルが求められます。単なる広告の配信ではなく、企業の成果に直結する戦略の構築が鍵となります。
ビジネスモデルと市場動向の理解
まず、自社の商品やサービスの特性をしっかりと理解することが重要です。製品の強みや弱みを正確に把握し、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。3C分析などがよく使われます。
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- 市場調査(マーケティング)の実施
製品やサービスに関連する市場の状況や顧客のニーズ、競合の動向などを体系的に調査・分析します。これらをもとに、効果的なマーケティング戦略を立てる事ができます。
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- 競合調査・競合分析
競合の強みや弱みを理解して、自社との差別化ポイントを探します。優位にあるポイントをクリエイティブに落とし込み、競合優位性を確保していきます。
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- 顧客セグメンテーション
ターゲットとなる顧客層を明確にし、それに応じた戦略を策定します。例えばペルソナを作ってユーザーのイメージをより具体化していきます。
施策の策定と戦略的な思考
市場のニーズに合わせたマーケティング戦略を考え、効果的な広告施策を提案・実行する能力が問われます。
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- マーケティングミックスの活用
4P分析で総合的な戦略を構築します。4P分析とは製品やサービスを市場で成功させるための要素を4つの観点から分析する手法です。4つのPとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)を指します。例えば、お茶を販売する場合、特別な茶葉を使用している商品を開発し、収益が出るライン且つ、競合他社と同等もしくは、安価な価格帯で提供し、ターゲット含有率の高い媒体でプロモーションを行うなど、バランスの取れた戦略が求められます。
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- 様々なメディアを活用する戦略
オンライン広告とオフライン施策を組み合わせ、シナジー効果を狙います。テレビCMやSNSと連動したデジタルキャンペーンを展開することで、より広範なオーディエンスにリーチできます。話題性も醸成されるため、オーガニック検索にも良い影響が出てきます。
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- ROIの最大化
投資対効果(ROI)を常に意識し、リソースを最適に配分します。限られた予算の中で最大の効果を得るために、費用対効果の高い広告媒体やターゲティング手法を選択します。
求められる経験
インハウス広告運用の求人では、過去の経験や実績が、そのまま即戦力として期待されます。具体的な実務経験や対応してきた案件の内容、どのような媒体での運用経験があるのかなどが見られます。
リスティング広告の運用経験
デジタル広告のメインとなるリスティング広告の運用スキルは必ず必要とされます。月間の費用が大きい案件の対応経験があると有利に働くケースがあるため、もし実施したことがないのであれば、経験ができる代理店などに所属する必要があります。
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- 大規模アカウントの運用
予算が大きくなればなるほど、キャンペーン数やキーワード数が増えていきます。その分それらを管理する能力などが問われたり、同時進行で様々なキャンペーンの状況を理解し改善策を講じる能力が必要です。
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- エディターの活用
広告の入稿や管理はエディターを使う事で時短につながります。それらのツールを使いこなすスキルが必要です。
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- 成果の実績
過去にどのような成果を上げたか、具体的な数値で示せると強みになります。例えば、「CPAを20%削減した」や「コンバージョン率を1.5倍に向上させた」などの実績は高く評価されます。
デジタルマーケティング全般の知識
リスティング広告だけでなく、SNS広告やディスプレイ広告の運用経験があると、より幅広い施策を提案できます。
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- SNS広告の運用
Facebook、Instagram、Twitter、LinkedInなどの広告プラットフォームでの運用経験。各SNSの特性を理解し、ターゲットに合わせたクリエイティブやメッセージを作成します。
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- ディスプレイ広告の理解
GDN(Google Display Network)やYDN(Yahoo! Display Ad Network)を活用し、バナー広告や動画広告で潜在顧客にアプローチします。
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- コンテンツマーケティングの知識
ブログ記事や動画コンテンツを活用した集客施策。SEO対策やユーザーエンゲージメントの向上にも貢献します。
求められる人物像
インハウス広告運用者には、スキルや経験だけでなく、以下のような人物像も求められます。
コミュニケーション能力
様々な業務が存在するマーケティング領域では、チーム内での円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。
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- 積極的な情報発信
施策の結果や、効果的なクリエイティブが何かを共有することで、他の施策に展開できたりするため、結果的に全体最適化などにつながっていきます。
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- 傾聴力
上記と同様に、他社からの情報共有には積極的に効くようにし、良いアイデアや施策であれば自身の担当領域で試してみるなどの姿勢が必要です。
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- 柔軟性
インハウス運用者に限った話ではないのですが、違った意見同士がぶつかった時に争うのではなく、改善するためにはどうすべきかの意見交換ができる柔軟性や環境づくりが重要です。
問題解決能力
広告運用における課題を迅速に特定し、効果的な解決策を実行できる能力が重要です。
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- 論理的な分析力
問題の根本原因を見極め、効果的な解決策を考案します。例えば、CVRが低下した要因を把握するため、アクセス解析や、流入しているキーワードの変化があるのか、インプレッションシェアの状況などを見て仮説を立てていきます。
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- イノベーション
新しい手法やツールを積極的に取り入れ、課題解決に役立てます。常に最新の業界トレンドをキャッチアップし、業務に活かします。
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- 責任感
会社の予算を用いてプロモーションを行うため、広告効果によって、業績に直結するケースが多くあります。自身が対応している領域で経営の方針が決まる事もあるので、企業にとっても重要な立ち位置になります。自身が会社の命運を握っているくらいの心意気で業務にあたる必要があります。
まとめ
インハウス広告運用の求人では、広告運用の基本的なスキルに加え、データ分析能力、クリエイティブ制作力、プロジェクトマネジメントの経験、そしてマーケティング戦略の理解が求められます。これらのスキルをバランスよく習得することで、企業のマーケティング活動に大きく貢献できる人材として活躍できるでしょう。
インハウス広告運用に興味のある方は、これらの能力をさらに磨き、ぜひ挑戦してみてください。自社の成長を支える重要な役割を担うポジションであり、やりがいと達成感を得ることができるでしょう。
Masahiro Ozeki
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