化粧品や健康食品、美容系サービスのGoogle広告を任されたとき、多くの初心者担当者がまず意識するのはCTRやCVRといった「数字」です。しかし、化粧品・健康食品・医薬部外品などを扱う広告運用では、数字以前に押さえておかなければならないルールがあります。それが「薬機法(旧薬事法)」です。

知らずに広告文やLPを作ってしまうと、アカウント停止や審査落ちだけでなく、企業として行政処分や罰則の対象になることもあります。この記事では、Google広告の運用担当者が最低限知っておきたい薬機法の基礎と、実務での注意点を整理します。

そもそも薬機法とは?

薬機法は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・健康食品などの品質や安全性を守り、消費者が誤った情報で健康被害を受けないようにするための法律です。広告表現に関して特に重要なのが以下の条文です。

  • 第66条(誇大広告等の禁止): 事実と異なる、あるいは実際より著しく優れているように見せる表現を禁止するもの
  • 第68条(承認前医薬品等の広告の禁止): 承認を受けていない効能・効果を標榜する広告を禁止するもの

これらの規制は自社サイトやLPだけでなく、SNS投稿やインフルエンサーによるPR、アフィリエイト記事なども、購入を誘引する意図があれば「広告」とみなされ対象になる点に注意が必要です。「知らなかった」は通用しないという前提で運用にあたる必要があります。

健康食品・化粧品は「言える範囲」が違う

Google広告の運用でよくあるつまずきが、商品カテゴリーごとに使える表現の範囲が異なることを理解していない点です。

一般的な健康食品は、身体の構造や機能に影響を及ぼすような表現を使うこと自体が、たとえ根拠があっても薬機法違反となり、そうした効果を表示できるのは国の届出や審査を経た機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)に限られます。

化粧品についても同様で、健康食品には薬機法上の明確な定義がなく、トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品を除けば一般食品と同じ扱いになるため、体の変化を連想させる効果効能表現を使うと医薬品とみなされて違反になり得ます。

実務上のポイントは、「その商品が法律上どのカテゴリーに属するか」を最初に確認し、カテゴリーごとに許容される表現の範囲内で広告文・見出し・LPを作ることです。同じ「痩せる」「美肌」といった言葉でも、商品区分によってNGにもOKにもなり得ます。

Google広告の運用で特に気をつけたい3つのポイント

1. 見出し・広告文での効能効果表現

Googleの広告審査自体も医療・健康関連の表現には厳しい傾向がありますが、審査を通過したからといって薬機法上セーフとは限りません。「治る」「完治」といった医薬品的な効能効果を連想させる語や、「必ず」「絶対」など効果を保証するような語は避け、使用感や体験ベースの表現に寄せるのが基本です。

2. LP(ランディングページ)全体の整合性

広告文だけでなく遷移先LPも規制対象です。医薬品ではない化粧品や健康食品について、医薬品のような効能効果をうたうと未承認医薬品の広告とみなされ薬機法違反になります。広告文がクリーンでも、LP内のビフォーアフター画像や体験談で行き過ぎた表現をしていれば、アカウント単位でのリスクになります。広告文とLPは必ずセットでチェックしましょう。

3. 推薦・権威付け表現の扱い

化粧品や医薬部外品の広告では、医師や美容師など医薬関係者による推薦表現は、事実であっても原則として制限されている点にも注意が必要です。「医師も推奨」「〇〇クリニック院長も絶賛」といった訴求は、意図せず規制に触れやすいポイントです。

景品表示法・健康増進法との合わせ技にも注意

薬機法だけでなく、隣接する法律もセットで意識しておくと安心です。健康増進法第65条第1項では、食品として販売するものについて健康の保持増進効果等を著しく事実と異なる形で表示したり、人を著しく誤認させるような表示をしたりすることが禁止されています。景品表示法(優良誤認表示)とあわせて、「薬機法はセーフでも景表法でアウト」というケースもあるため、広告文チェックは複数の法律を横断して行うのが実務上安全です。

罰則は決して軽くない

未承認の効能効果を標榜する広告は第68条違反となり、2年以下の懲役または200万円以下の罰金の対象になり得ます。さらに令和3年8月からは課徴金制度が導入されており、誇大広告に該当した場合は対象商品の売上額の4.5%が課徴金として科される仕組みになっています(自主申告による減額規定あり)。運用担当者個人が罰せられるケースは稀ですが、クライアント企業に重大なリスクを負わせる可能性があることは常に意識しておくべきです。

明日から使える実務チェックリスト

Google広告の入稿前に、最低限次の点を確認する運用フローをおすすめします。

  • 商品が化粧品・医薬部外品・健康食品(一般食品)・機能性表示食品のどれに該当するか確認したか
  • 見出し・説明文に医薬品的な効能効果表現(治る、痩せる、改善するなど)が入っていないか
  • 「必ず」「絶対」など効果を保証する表現がないか
  • 医師・専門家による推薦表現を使っていないか、使う場合は許容範囲か
  • 広告文だけでなく遷移先LPの表現も含めてチェックしたか
  • ビフォーアフター画像や体験談に誇大な表現が含まれていないか
  • クライアントの薬機法チェック体制(社内担当者・専門家によるリーガルチェック)と連携できているか

まとめ

Google広告の運用スキルとして、キーワード選定やP-MAXの構成、コンバージョン計測の精度と同じくらい、薬機法をはじめとする広告規制の理解は欠かせません。特に化粧品・健康食品ジャンルを担当する初心者の方は、「効果を伝えたい」という気持ちが先行してNG表現に踏み込んでしまいがちです。まずは商品カテゴリーごとの許容範囲を把握し、入稿前チェックリストを運用フローに組み込むことから始めてみてください。