前回の記事では、AIを活用することで医療広告のチェック作業を効率化できることをお伝えしました。今回は、医療法などガイドラインチェックするうえでAIが苦手と考えられることについて見ていきましょう。

【AI×医療広告】AIを活用してチェック作業をより効果的に。

チェックするうえでAIが苦手なこと

AIが苦手なことをいくつかピックアップしてみます。

曖昧な表現を拾うことはできない

AIは「最高」「No.1」といった最上級表現や「絶対」「必ず」などの断定表現など、明確に定義されたNGワードの検出は得意です。しかし文脈によって判断が分かれる表現や、微妙なニュアンスの違いを見極めることは現在のAIではまだ難しい内容です。

画像などビジュアル要素を適切に判断できない

医療広告では、ビフォーアフター写真や施術イメージ画像の使用に厳しい制限があります。AIはテキストの判定は得意ですが、画像の場合はガイドライン上適切かどうかを判断することは困難です。例えば、ビフォーアフター写真が効果を過度に強調していないかといった視覚的な印象の判断や、写真に付随するリスクや費用の説明文が十分かどうかも現段階のAIでは適切な判断は難しいです。

業界特有の慣習や表現への対応について、くみ取ることはできない

医療業界では、診療科目ごとに使用される専門用語や表現が異なります。美容医療、歯科など、それぞれの分野で一般的に使われている表現の中には、ガイドライン上はグレーゾーンだが業界慣習として許容されているものもあります。AIはこうした業界の暗黙知や、過去の審査事例に基づく判断基準を理解することが難しいため、人間による最終確認が欠かせません。

必要な情報の過不足を判断できない

ビフォーアフター写真を掲載する際には、施術の詳細(期間、回数、費用)、リスクや副作用、個人差がある旨の説明など、必要な情報をセットで記載する必要があります。AIは個別のテキスト要素は検出できても、「この広告に必要な情報が全て揃っているか」「重要な情報が抜けていないか」という全体的な過不足の判断は苦手です。また、リスクや注意事項の記載があっても、その説明が十分な内容かどうか、患者が正しく理解できる表現になっているかといった質的な評価も、人間による確認が欠かせません。

最新のガイドライン改正に即座に対応できない

医療広告ガイドラインは定期的に改正されますが、AIは過去のデータで学習しているため、最新の改正内容を即座に反映することができません。ガイドラインが改正されても、AIの学習データを更新するまではAIは古い基準で判断してしまうリスクがあります。また、ガイドラインの文言は変わっていなくても、行政指導の傾向や審査の厳格度が変化することもあります。例えば、以前は黙認されていた表現が急に指摘されるようになったり、特定の診療科目での取り締まりが強化されたりといった運用レベルの変化は、明文化されていないためAIに学習させることが困難です。

AIと人間それぞれの強味

それぞれの役割について改めて考えてみます。

AIの強みはチェックのスピードと正確さ

AIの最大の強みは、大量の広告文を短時間で一定の基準でチェックできることです。「最高」「No.1」といった最上級表現や「絶対」「必ず」などの断定表現といった、明確に定義されたNG表現を漏らさず検出します。人間のように疲労で集中力が低下することもなく、何百件チェックしても同じ精度を保ち続けられます。また、複数の担当者がチェックする場合でも、AIを使えば全員が同じ基準で判断できるため、担当者による判断のバラつきを防げます。ガイドラインを読み込みながら一つずつ確認していく作業が数秒で完了するため、チェック時間を大幅に削減し、削減できた時間を戦略立案や広告改善といった付加価値の高い業務に振り向けることができます。

人間の強みは文脈理解と総合判断

人間の強みは、文脈全体を理解し、微妙なニュアンスを判断できることです。同じ表現でも、前後の文脈や広告全体の構成によって、問題になるかどうかが変わることがあります。例えば「多くの方に選ばれています」という表現が実績を述べているのか、優位性を暗示する誇大表現なのかは、周辺の情報を総合的に見て判断する必要があります。また、業界特有の慣習や過去の行政指導事例、最新のガイドライン運用動向といった暗黙知を活かした判断も人間ならではです。AIが検出した内容が本当に違反なのか、それとも誤検知なのかを見極め、グレーゾーンについて最終的な判断を下すのは人間の役割です。

AIと人間の役割分担を明確にしよう

ここまで見てきたように、AIには「スピードと正確性」という強みがあり、人間には「文脈理解と総合判断」という強みがあります。効果的なチェック体制を構築するには、この2つの強みを対立させるのではなく、補完し合う関係として捉えることが重要です。AIには明確なルールに基づくチェックと一次スクリーニングを任せて、人間は文脈を踏まえた最終判断とAIでは対応できない複雑なケースの精査を担う。このように役割を明確に分けることで、効率性と判断力を両立した質の高いチェック体制を実現できます。

 

今回は以上となります。次回は、AIを活用するチェック体制について考えてみたいと思います。